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[安岡美佳]【猛暑を快適にする解決策は北欧にあり】~注目集めるフィンランドの循環式熱源水ネットワーク~

Japan In-depth / 2015年8月17日 18時0分

[安岡美佳]【猛暑を快適にする解決策は北欧にあり】~注目集めるフィンランドの循環式熱源水ネットワーク~

私が住んでいるデンマークをはじめとした北欧エリアは、再生可能エネルギーの活用が盛んなエリアであると言われる。例えば、デンマークは、世界に先駆けて風力発電を80年代から草の根的に活用し、最近では「2050年までに100%脱炭素」政策を打ち出している(*注1)ことから、2011年の東日本大震災を機に、地球に優しいエネルギーの効率的利用の観点で、日本からの注目も高まっている。

1年ほど前に、私が主催する北欧研究所で、ドイツ企業の依頼により、数年前に地域熱供給に関する調査したのだが、そのときの知見は、今の茹だるような暑さの日本にとって示唆となるのではないかと思っている。今回のテーマは、「暑い夏を快適にする解決策は、もしかしたら北欧にあるのかも」。

近年の環境や自然エネルギーへの関心の高まりを受け、世界的に地域熱供給が注目されている。注目の先は、西洋の都市圏を中心に広く活用されている地域暖房(*注2)単体ではなく、火力発電所で電気を作るときに発生する余剰熱、太陽熱や下水処理熱などの熱源を有効活用する方法としての発電所を含めた熱源水ネットワークであり、暖房や冷房をそのネットワークの一端を担う役割とみなす点だ。環境への配慮、エネルギーの効率化に真剣に取り組む欧州諸国では、環境に優しく、コスト効率とエネルギー効率を上げる熱供給方法として、導入が急速に進んでいる技術といえる。

デンマークで一般的に普及している地域暖房は、CHP(Combined Heat and Power:熱源供給システム)などの大型の温熱源からパイプラインを引き、温水をパイプラインに流す事で、人口が密集しているエリアに暖房を敷設している。その一方で、地域冷房は、同じパイプラインの仕組みに、冷水を流す事で、冷房機能をもたせているものといえる。

前述の地域熱供給調査の過程で、最も興味深く感じられたのが、フィンランド首都ヘルシンキのヘルシンキエナジーが取り組む地域冷房だった。フィンランドで冷房?と思うかもしれない。フィンランドで注目されているその最大の理由は、コスト効率とエネルギー効率が抜群だから。データセンタなどで出た熱を冷却するため、また、大型商業施設で活用するため、フィンランドの冬でも冷房のニーズがあるのだそうだ。冷房に利用されて暖められた水は、循環して地域暖房にまわされることになる。例えば、空気に放出されてしまえば害となってしまう冷房から排出される熱、海水に放水されれば海水温度の上昇をもたらしかねない下水処理熱などが、都市を循環し、適切な場に再利用される。同様に、地域暖房に使われ冷やされた水は、冷却水として活用される仕組みとなっている。

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