[岩田太郎]【根深い病根、東京五輪は返上せよ】~オリンピックは今や私的な利権の祭典~
Japan In-depth / 2015年9月7日 18時0分
東京五輪組織委員会は9月1日、アートディレクター佐野研二郎氏がデザインした公式エンブレムの使用を中止すると発表し、日毎に深まる国民の2020年東京オリンピック大会そのものへの不信増大という事態の幕引きを図った。
だが、ロゴが使用中止になっても国や組織委の無責任体質は何も変わっておらず、それゆえに新国立競技場や今回の問題で明らかになった「密室型お手盛り・責任所在不明・分配の不公平」に起因する事象は、必ずより深刻な形で繰り返し噴出する。その後始末にはオリンピック終了後に多数の大型「ハコモノ」を抱え込む国民の血税がさらに多く使われることになろう。
スポーツ界だけでなく、デザイン業界・放送業界・スポーツ用品業界・観光業界・建設業界・広告業界・大会スポンサーをはじめとするステークホルダーの莫大な利権と利益が絡み、税金や広告収益から流れるカネのお手盛り分配がもたらす腐敗が、予算オーバーや工期遅れや他の好ましくない問題となって噴き出し続けるのだ。ダメージコントロールは、より難しくなっていく。
なぜ、そうなるのか。それは、招致費用や開催にかかる費用を国民が負担するオリンピックが、「公」を大切にするスポーツの祭典ではなく、「私」や「組織護持」が最も重要な、利権を束ねる祭典に変質したからである。大会開催の過程で国民が不在なのに、国民のカネで私腹を肥やし、問題が起こればコストを国民にシフトする体質が、新国立・佐野問題の本質だ。
その体質を象徴するのが、スポーツ「選手」から「アスリート」への呼称の変化だ。数十年前まで、選手は育ててくれた地域や国への感謝や奉仕を体現するものとされていた。本音は別として、アマチュア選手がお金や名声を求めることは、恥ずかしいという文化があった。勝ってガッツポーズを決めたり、「必ず勝ちますから」などと不遜な言葉を吐くなど、論外だった。謙遜と謙譲が必須だった。
だが、今はアスリートが「私」の追求を前面に出しても、非難されることはない。スポーツが「公」や友情や自己鍛錬のためでなく、金儲けの道具という米国型の考え方が定着した今、彼らを英語で「アスリート」と呼ぶのは正しい。
こうして「公」から「私」へと変質したスポーツのあり方が、そのまま国民不在のオリンピック運営に現れている。1964年の東京大会は、敗戦後の国民の心と情熱を鼓舞し、国民生活も確実に向上させた。だが、国民生活の体感が低下し続けるなか、東京による2016年・2020年の大会誘致に際して、国民の熱狂や支持が足りなかったのは、当然だ。
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