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[安倍宏行]【テレビ局の岐路、今ここに】~ネットフリックスを視聴して~

Japan In-depth / 2015年9月12日 11時0分

全米から次から次へと応募してくる高校卒業したてのギャルや、現役女子大生らハイティーン達。ずぶの素人が、いとも簡単にネットポルノの女優を目指す。彼女たちの動機は自由と金。すれてない彼女たちに世界中からアクセスが殺到する様は不気味でもある。ネットの中の名声は長くは続かない。彼女らの賞味期限はなんと3か月そこそこなのだ。代わりはいくらでもいる。少しでも長く続けたければ、要求されるプレイはよりハードになっていく・・・ネットの中で消費され尽くす若い女性の儚い夢をカメラが残酷に切り取る。

こんなドキュメンタリー、日本のテレビ局が作れるだろうか。そもそもめちゃくちゃ金と時間がかかる。テーマがテーマだけに地上波では企画が通らない可能性が高い。今のテレビ、物議を醸しそうなものは徹底的に排除だ。すぐに視聴者からクレームがくる。BPOに訴えるぞ、と言ってくる。(実際、訴えるケースは多い)テレビ局はそんな冒険は犯したくない。だから無難なテーマになる。そもそもドキュメンタリーの枠は縮小傾向で、放送する時間も深夜か休日の昼間だったりする。作る気などとっくに失せているのだ。

ネットフリックスら海外勢は違う。面白いコンテンツを作ってくれる製作者には金を惜しみなく出すと明言している。テレビ局の為に良質の作品を作っていた制作会社や個人が、海外勢の為に作品を作り始めたらどうなるのだろう?考えただけでも恐ろしい。何もネットフリックスだけではない。ライバルのHuluや、まもなくサービスが開始される「Amazon プライム ビデオ」も同様だろう。

視聴するための月額料金はどのサービスを選ぶかの大きな要因となりうる。先行するHuluは月額933円(税抜き)だが、ネットフリックスは月額650円(税抜き)の低価格コースで殴り込みをかけた。(高解像度複数端末視聴可の950円コース、4K対応の1450円コースもある)。Amazonプライムビデオに至っては、プライム会員(税込み年3,900円、月325円)なら追加料金なしでコンテンツが視聴できる。日本勢のドコモ系dTVは月額500円(税抜き)だ。

価格競争は熾烈を極めている。複数のサービスを同時契約するようなヘビーユーザーはそうそういないだろうから、こうなってくるとオリジナルコンテンツがどのくらいあるかが勝敗を分けるだろう。視聴者にとって魅力的な作品が増えることは大歓迎だがテレビ局にとっては脅威以外の何物でもない。個々のテレビ局の製作費では、豊富な資金力を誇るネットフリックスらに対抗できない。このままでは海外勢の軍門に下ることになってしまう。在京民放5社は共同で、10月から番組の無料動画配信を開始するが、そんなものでは太刀打ちできない。他の企業と提携して大量の資金を調達するなどして、海外勢に対抗できるキラーコンテンツを作ることが生き残りのための唯一の策であろう。横並び一線で来たキー局のネット戦略は今分かれ道に来ている。

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