[岩田太郎]【「公判が維持できないから軽い罪で起訴」は検察のウソ】~理不尽司法の限界 3~
Japan In-depth / 2015年9月22日 18時0分
酒鬼薔薇聖斗こと当時14歳の「元少年A」(33)が1997年に起した神戸連続児童殺傷事件で殺害した土師淳君(享年11)などの遺族は、彼に対して、前科がつかない6年半の医療少年院送致の処分しか下されず、しかも出所して10年余の今、手記を出版し、ホームページまで開設して情報発信をしていることに、深い苦しみを覚えている。理不尽司法の限界である。
こうした苦しみを味わうのは、少年法の特別に寛容な適用と対峙しなければならない被害者や遺族だけではない。無謀かつ人の命を顧みない危険運転で人を殺した者が、及び腰の検察によって、刑が異常に軽い過失運転でしか起訴「できない」案件が、北海道と大阪府で遺族を塗炭の苦しみに陥れた。
2014年7月13日、北海道小樽市の海岸から帰り道を歩いていた原野紗耶佳さん(享年29)、石崎里枝さん(享年29)、そして瓦裕子さん(享年30)は、運転前に12時間も海の家で飲酒し、しかも酔った状態で携帯電話を操作してハンドルを握っていた海津雅英被告(32)運転の車にひき逃げされ、死亡した。
海津被告ははねた人を救助せず、買い物目的で寄ったコンビニで、人をはねた車の傷を確認し、たばこを購入した。2つ以上の犯罪について量刑を足し合わせる併合加重で、最高刑が懲役30年の危険運転致死傷罪の要件である、「アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」に該当すると誰もが考えたが、検察は「携帯電話の操作によるわき見が原因なので、最高刑が懲役7年の過失運転罪で起訴する」とした。
机上の法律論で裁きを行う検察にとって、人の命はかくも軽い。立ち上がった遺族が7万筆以上の署名を集め、高まる世論を恐れた検察は異例中の異例である訴因変更を行い、海津被告は危険運転致死傷罪に問われ、7月9日に札幌地裁で求刑通り懲役22年が言い渡された。海津被告は、7月23日に控訴して争っている。
この案件で検察は、適用基準が厳格な危険運転致死傷罪で起訴した場合、公判が維持できなくなることを危惧したとされる。だが、それはウソだった。地裁は、求刑通りの懲役刑を海津被告に言い渡したからだ。すべては、政治的意志なのだ。
これだけ少年法における刑事処分や危険運転致死傷罪の適用に全くヤル気のない検察だが、ある種の訴因の適用には、原理主義的ともいえる熱意を示す。それは、欧米から日本が外圧や影響を受ける児童ポルノ、「親による誘拐」を防ぐハーグ条約、乳児の揺さぶり症候群による死、JKビジネス(人身売買)などだ。
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