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[遠藤功治]【米の厳しいNOx規制が引き金】~VWディーゼル車排ガス規制不正問題 2~

Japan In-depth / 2015年10月1日 0時4分

VWは2009年頃からこの不正に手を染めていたとも言われています。つまり、世界拡販、米国での販売台数増、それも大幅な台数上積みによりトヨタを抜くという計画を開始した頃でしょう。中国は大丈夫、欧州もホーム市場かつディーゼル車の本場であり、後は米国で台数を伸ばすだけ、どのような戦略で伸ばすのか、やはり本家本元、強い筈のディーゼル車でアピールする、トヨタやホンダがハイブリッド車で米国に攻勢をかける、これに対抗しVWは、燃費や環境基準の水準でトヨタを凌ぐだけでなく、ハンドリングや運動性能も犠牲にしない環境車で攻勢をかける、これがVWの米国再成長のロードマップの筈でした。結果は取り返しのつかない失敗でした。

3、米国での非常に厳しいNOx基準とディーゼル車の対応

今回問題になったのは“defeat devise (ディフィート・デバイス)””defeat”とは”負かす、不作動にする、無効にする“と言う意味。”devise”は装置です。今回の場合は、”無効化機能“などとも呼ばれます。米国の環境基準局であるEPA(Environmental Protection Agency)が、排ガス基準をクリアしているかテストする訳ですが、基準をクリアするために取り付けた浄化機能装置を、テストの間だけ作動させて基準をクリアし、販売後に実際ユーザーが運転する時は、その機能を停止・低下させるという違法プログラムが今回のケースで摘発されたものです。米国でも欧州でも日本でも、このような機能の使用は禁止されています。

では何故、このようなプログラムを取りつけたのか。ここで問題になるのは、NOx(窒素酸化物)の排ガス規制と、米国で使用されている硫黄分が極端に高い低品質の軽油の存在です。一般に自動車の排ガス規制といえば、NOx、CO2(二酸化炭素)、PM(粒子状物質)の3つの規制を指します。この3点に於いて、全ての基準値を満たす必要がある訳ですが、欧州ではCO2規制により重点が置かれますが、日本や米国ではNOxの規制により力が入れられる傾向にあります。

実際、その規制値は日本・米国・欧州で異なっています。今回問題になっているNOxの規制値では、実は米国が日本や欧州よりも2倍も厳しい基準を持っています。また米国でも特に環境に厳しいと言われるカリフォルニア州では、新車販売時だけではなく、使用開始後、永い場合は20年にも渡って、排ガスの規制値をクリアしていることが義務付けられているのです。

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