[小黒一正]【軽減税率導入は撤回しても問題ない】~給付付き税額控除も含め総合的判断を~
Japan In-depth / 2015年10月4日 11時0分
平成27年度与党税制改正大綱では、「与党合意」として、「消費税の軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める」と明記されている。
この与党合意に基づき、軽減税率の導入に公明党が拘っていることから、その扱いを巡って政治が混乱している。また、9月18日に、日本新聞協会は以下の「消費税の軽減税率制度に関する声明」を出した。
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(引用開始)
与党は9月10日、消費税の軽減税率制度について財務省が試案を示したのを受け検討を再開した。しかし、「日本型軽減税率制度」として示されたこの案は、消費者にさまざまな負担と混乱を強いるもので、税制としてきわめて問題が多い。与党はこれまで積み重ねてきた複数税率による軽減税率制度の議論に一刻も早く復帰し、同制度を平成29年4月の税率引き上げと同時に導入すべきである。財務省案は消費税率を10%に引き上げる際、全品目に10%の税率を課したうえで、飲食料品等の増税分の一部を限度額の範囲内で「ポイント制」により還付する仕組みである。飲食料品の消費税額を把握するためマイナンバーカードを活用するとしている。この案の最大の問題は、事業者の事務負担軽減を優先して、その分を消費者にしわ寄せしていることである。子供や高齢者も含めてマイナンバーカードの携帯を求められることに加え、パソコンなどIT端末に習熟していなければ税の還付を受けられない。このため特に高齢者は利用しにくく、現在の高齢化社会にまったくそぐわない制度といわざるを得ない。マイナンバーカードの取得は任意であり、しかも税率引き上げ時にカードの普及は間に合わない。買い物情報を読み取るカードリーダーもすべての飲食料品店や飲食店、宅配業者などに配置するには多くの費用がかかるうえ、そもそも困難である。この結果、税の還付を受けられる人が限られることになり、これは税の公平性や制度の簡便性の観点からも看過できない問題である。消費者の買い物データを国が把握することに対する情報セキュリティー上の懸念やプライバシー保護の面での心配も残る。さらに事後還付方式だと消費時点の痛税感の緩和に限界があり、結果として消費を冷やすことになりかねない。これら構造的な問題を抱えている以上、今回の財務省案あるいはこれに類する事後還付方式の消費税軽減措置を導入すれば国民生活に混乱を招くことは必至である。
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