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[渋谷真紀子]【日系人収容所の物語、ブロードウェイ進出】~GAMAN(がまん)精神で平和で平等な社会へ~

Japan In-depth / 2015年10月5日 18時0分

演出家スタフォード・アリマさんはカナダ人で、日系2世の父親はカナダの収容所経験者です。戦後、父親は中国系コミュニティに入り、中国系カナダ人と結婚された為、スタフォードさん自身はほとんど日系人の歴史に触れることはなかったといいます。

一方、アソーシエイト・ディレクターのメラニー・ロッカーさんは、ハワイ出身の日系人5世で、ハワイの日系人文化の中で育ちました。私自身は幼少期アメリカで過ごした帰国子女ですが、日本で生まれ育った日本人です。日本にルーツのある演出部の3人でも、其々が「Japanese sprit:大和魂」に異なる視点を持っています。

稽古風景:主演のテリー・リアング(左)、演出家のスタフォード・アリマ(右)

私は日本人として、アメリカ人視点での歴史解釈の把握、アメリカに移民してきた日系人の想い・歴史・文化の理解、そして現在アメリカに住む日本人(マイノリティ)として感じること等、様々なレイヤーでこの作品の伝え方を考えてきました。

日本人の視点から、事象の解釈や役柄の創り方がふさわしいかどうかをみることは、私の役割の一つです。作品の中で日本・日本文化・日本語に関することは、演出チームだけでなく、アメリカ人中心のクリエイティブ・チーム(脚本家・作曲家・音楽監督・演出家・振付家)との議論になります。

様々な意見を取り入れるキャパシティのあるチームだからこそ、5年から7年間この作品を育ててきたアメリカ人チームに新入りの日本人が意見し、それが作品を良くすることに繋がっているのかは慎重にならなければいけません。

例えば、オープニングナンバーで七夕の短冊に願いをかけるシーンは、カルフォルニアでのアーティチョークの収穫祝いとしてピクニックをしながら木に短冊を飾ります。日本語の俳句を日本語歌詞としてサビに歌いますが、青空とアーティチョークの青緑が映える昼間に、「月を見る」という歌詞を謡っている違和感から歌詞の変更を提案しました。採用されたものの、以前の歌詞の方がオープニングナンバーのコーラスとして豪華なハーモニーになったと感じる人も中にはいます。

役者さん達は、日本から渡米した日本人の方もいますが、日本語を話さない日系人二世以降か他のアジア系アメリカ人がほとんどです。日本語としての正当性だけでなく、アメリカ人がコーラスで歌って綺麗に聞こえる日本語という視点が必要でした。

また、日本から移民してきた一世とアメリカで生まれ育った二世の違いを描くため、一世の役は日本語の台詞があります。日本語が英語の会話に入り、アメリカ人の役者さん達が話す際に、どれが短くて言いやすくて残りやすいか等も新しい挑戦でした。

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