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南シナ海で中国をけん制するウルトラC~“潜水艦救難艦”のベトナム供与~

Japan In-depth / 2015年10月7日 23時0分

まず、南沙は中国の核心的利益であるため、日本が絡んだ場合には恨みを買い、かつての尖閣国有化同様の反発を引き起こす可能性がある。また、そもそも南沙諸島の領有問題は関係諸国同士の問題であり、日本としてはどこの国にも肩入れできないし、すべきではないこともあげられる。


日本と米国にとっての南シナ海問題は、自由航行と上空通過の権利の確保だけである。暗岩なのか、岩なのか、島であるかどうか、それがどこの国のものであるか、海底資源は誰のものかについて、関与すべきではない。(注2)


その点で「ちよだ」引渡しは優れている。南沙領土問題に触れることなく、南シナ海で中国海軍力を拘束する効果を期待できるためだ。


■日本潜水艦救難に役立つ可能性もある


他にも効果は見込める。まずは、おそらく南シナ海で活動している海自潜水艦の救難に役立つ点だ。


海自潜水艦は、おそらく海南島周辺まで展開している。もちろん、潜水艦行動は秘匿性が高いためどこで活動しているかは全く公表されていない。海自部内でも潜水艦行動域は潜水艦関係者だけしか教えられない。だが、そのサイズから推測される行動範囲や、戦時の攻勢的対潜水艦戦の所要を考慮すれば、南シナ海まで、中国南海艦隊の拠点である海南島まで展開している。


そして、仮に南シナ海で潜水艦が遭難した場合、日本国内からの救難はおそらく間に合わない。この点で、ベトナムが潜水艦救難艦を持ち、救難協力を得られる体勢は日本にとっての利益となる。


また、ベトナム潜水艦運用や、その性能を知り得る機会ともなる。海自の潜水艦救難艦は潜水艦職域が運用している。その技術支援にOBを送り込むことができれば、ベトナム潜水艦運用についての情報収集となり、「キロ」の性能や特徴をつかむこともできる。ちなみに「キロ」はベトナムだけではなく、ロシアや中国海軍も使っている。


ギブ・アンド・テイクでベトナムに潜水艦運用を教えても良い。潜水艦の操作操縦、運用は東西問わない。一部には差がある(例えば、浮上時に空にする主要タンクの底は、西側はフリーホールだが、東側はキングストンバルブをつけている)と言われているが、基本的に同じである。


■鉄くずにするよりマシ


通例であれば「ちよだ」とDSRVは廃用後、鉄くずとして廃棄売却される。「ちよだ」本体価格は250億円、別に単体発注された「ちよだ」DSRVは200億円したが、鉄くずとしては1500万程度にしかならない。実際には非鉄金属分があるので多少高く売れるが、解体費も掛かるため、ほぼタダのようなものだ。


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