[林信吾]【スポーツと政治と移民問題】~ヨーロッパの移民・難民事情 その2~
Japan In-depth / 2015年10月8日 23時0分
ラグビー日本代表が大いに注目を集めているが、ニュージーランドやトンガで生まれた選手が「桜のジャージ」を着ていることを不思議に思う向きもあるようだ。
ラグビーの代表に選ばれるには、国際ルールにより、
(1)当該国で出生していること
(2)両親または祖父母の誰か一人が当該国民であること
(3)試合前36ヶ月間、当該国に継続して居住していること
このいずれかの条件を満たすことが求められ、実は国籍は関係ないのである。
サッカーの場合、当該国の国籍を持っていないと代表入りは認められないし、かつ、一度どこかの年代(たとえば18歳以下)で代表に選ばれた場合、後で国籍を変更しても他国の代表にはなれない。
アマチュアリズムに徹しているラグビーと違って、サッカーは大きなお金が動くので、こうした規定がないと、金満国家が世界中から優秀な選手をかき集めるようになり、見ている方はしらけてしまうだろう。
これを国籍主義と言うのだが、移民の場合、当該国の国籍を持っているのが普通なので、サッカーのフランス代表など20年以上前から、整列するとどこの国の代表だか分からない、などと言われ続けてきた。
1998年ワールドカップ・フランス大会において、彼らは初優勝を成し遂げ、フランス全土を熱狂させたが、たとえば、クロアチア相手の準決勝で勝ち越し点を挙げた展開は、こうであった。
まず、相手ディフェンダーからのロングボールを、デザイー(ガーナ出身の黒人)がヘディングでカット。こぼれ球をプティ(生粋のフランス人)が拾って、リザラス(フランス国籍のバスク人)にパス。さらに、司令塔と呼ばれたジダン(アルジェリア系移民の2世)にパス。ジダンは一瞬、フィールドを見回したが、やおら逆サイドのティラム(カリブ海のクアダループ島出身の黒人)にロングパス。ティラムが駆け上がる。そして、相手ゴール前で粘っていたアンリ(同じくクアダループ島出身の黒人)にひとまずパスが通り、ふたたびティラムにパスが戻って、シュート。フランスの栄光のために戦う外人部隊よろしく、移民やその息子達が奮闘したのだ。
これまで比較的「純血」を保ってきたドイツやイタリアでも、最近は黒人選手の台頭が著しいし、中東諸国では、オイルマネーに物を言わせて、ブラジル人の若手を、代表に選ばれる前に「青田買い」して国籍を与える例すら見られる。
アジアにおいても、日本のJリーグで活躍した在日の選手が北朝鮮代表に招集され、その後韓国のKリーグにスカウトされる、といったことが、今や普通になってきている。日本代表自体、帰化した在日やブラジル出身の選手を抱えて、これまで戦ってきた。
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