インドネシア高速鉄道、受注敗北ショック~日・中・ASEANのこれから その2~
Japan In-depth / 2015年10月12日 7時0分
■なぜ中国は勝ち、日本は負けたのか
それでは中国はなぜ土壇場の逆転に成功したのだろうか。逆に言えば日本はなぜ中国を退けられなかったのだろうか。
独断と偏見とお断りすると、答えは簡単だ。いま中国は何をおいても日本に勝ち、日本の顔色を失くさせしめることに全力投球だからだ。米国との「新型大国関係」を目指す以上、日本の後塵を拝することは出来ない。すべてと言わないまでも、衆目の及ぶところ日本には絶対負けられないし、そのためなら少々の無理も厭わない。
とくに東南アジアでは近年、日本のプレゼンスの痕跡を消すのに躍起のように見える。最近出版した拙著『日本はASEANとどう付き合うかー米中攻防時代の新戦略』(草思社)で紹介したのは、中国の援助で造る橋や道路が決まって日本の造った橋や道路の隣で、かつそれより大きな橋や道路を造るというカンボジアのエピソードだった。「日本の跡を消そうと言う魂胆ですよ」とはカンボジア専門家の解釈である。
今回の受注争奪戦も同じような狙いから、中国の下した提案は伝えられるようにインドネシアの求めた財政負担や債務保証を伴わない事業実施の受け入れだった。数千億円とも言われる事業費の大半を中国が面倒を見ましょうという。
日本はジョコ大統領が来日した際に、1400億円の円借款(有償資金協力)を約束した。いくら低利でも円借款は返すのが条件だから、これでは日中勝負にならない。しかも完成予定が2030年の日本に対して中国は2018年と超特急である。
日本は負けるべくして負けたと言えるが、何もそこまでして獲得する必要はないとも思う。菅義偉官房長官が「中国案決定の経緯は理解しがたく、常識では考えられない」と批判した気持ちも分かる。
しかし恐らく今後も似たような日中争奪戦は起きる。日本は同じ過ちを繰り返さないことが肝心だ。「安い・早い」で中国と競うのはもはや賢明ではない。量より質であり、日本の強みを生かすとの原点に立ち返るべきだ。
もっとも消息筋によると、実は中国の再提案に借款も入っており、しかも利子が円借款より何倍も高いのだと言う。従って鉄道計画は頓挫するのではとも囁かれている。単なる噂か真か、中国提案の本当の内容は分からない。
周知のように中国は軍事予算も経済成長も、数字が不透明な上に、先進援助国で構成されるOECD(経済協力開発機構)にも加盟していないため、実態が分かりにくい。そこで日本はもとより他の加盟国も様々な数字を突き合わせながら、中国の対外援助の実相を推し量ってきたのである。
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