[嶌信彦]【高揚感ない安倍新組閣】~オリンピック後の日本の展望みえず~
Japan In-depth / 2015年10月18日 11時0分
第三次安倍内閣がスタートしたものの、迫力も高揚感も感じられない。第二次では、当初経済の再生を声高に叫んだが、国会議論の中心は安保法制の成立だった。憲法9条の改正には挑まず、9条の法解釈を変えてこれまでタブーとされてきた集団的自衛権や周辺事態のあり方などを大きく変更する法律を制定してしまう政策だった。
憲法学者、法学者はじめ有識者、文化人らの多くが反対し、国民の6,7割も「新法の内容がよくわからない」「憲法を改正せず、憲法の解釈を変えて安保法制をいじることは反対だ」という国民の意見は過半数を超えた。
それにも関わらず、9本の法律を一括して一本にまとめ強行採決した背景には、祖父岸信介元首相の果たせなかった思いを自らの手で成し遂げたいとする安倍首相の長年の宿願があったことは間違いなかろう。それと今春の日米首脳会談、日米防衛幹部らとの話合いの中で、アメリカがアジア、太平洋から徐々に軍を引き揚げ軍事費も減らす状況の中で、日本が一部を肩代わりし穴埋めするという約束をしてきたことも大きかった。
日本の国会と国民に法案が出される前に日米首脳が憲法に関わる日米の安保法制について両国で話合っていたわけだ。立憲主義を軽視し、ないがしろにしているといわれた所以である。
その安保法制が可決してしまった途端、安倍政権は大きな目標を失い政権のエネルギーが衰弱してきたかのようにみえる。一応、次の政策の目標としてやはり「経済再生を第一にする」といい、“新三本の矢”を公表している。
第一は「強い経済」を目指し2020年度にGDP600兆円を達成。第二は人口減少を食い止めるため「子育て支援」を強化し出生率を1.8に上昇させる。第三は社会保障分野で「介護離職をゼロにする」と打ち出し、それを実現するため2080年の人口を1億人まで増やし、「1億総活躍社会」の具体策をつくるため加藤勝信官房副長官を担当大臣にあてた。
ただ、これらはスローガンとして掲げてはいるが、どう具体化するかという策はまだなく、現状の数字から考えると実現は難しそうだ。そもそも最初の“三本の矢”も巨額の金融緩和で株価は3000円強上昇させたが、設備投資が増え景気が上昇し、賃金もあがるという構図は依然実現できないままである。
これで中国のバブル崩壊が深刻になると世界経済全体が低調になり、さらにアメリカの金利引き上げで日本が円安となり輸出増につながるという目論見も成功していない。そこへ具体的方法も定まっていない“新三本の矢”の提案は、いかにも取ってつけたようで世間も燃え上がらず湧かなかったのも当然だったかもしれない。
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