[比嘉陽子]【変動相場制に翻弄される世界最貧国】~アフリカ“マラウイ”最新リポート 2~
Japan In-depth / 2015年10月19日 15時0分
アフリカの国、マラウイが独立したのは、アフリカの年と呼ばれた1960年から4年遅れた1964年である。
途上国では、市場経済以外の原理が今でも強力に機能している。例えば、自家消費用の作物を育てることであったり、労働の対価を金銭ではなく食糧で支払いを受けたり、または交通費を支払って都市まで出かけ銀行口座に入金してわずかな利子を得るよりも、すぐに育つ家畜を購入して財産を貯蓄したりする行動原理がそうだ。こういった市場経済のデータに現れないモノや価値の移動が前述のギャップを生む要因になっている。
しかし、これら複数の原理が機能する途上国を数字で正確に捉えることはできないにしても、また「貧困」というのは大変多岐のジャンルにまたがっており、比較できるようなものではないにしても、これらの国が貧しいことは間違いのない事実である。
マラウイの貧しさは、生活者のレベルで見れば自然災害に脆弱な農業生産性により一日三食満足に食べることが多くの人にとって難しく、初等教育で読み書きを覚えても就業先がなく安定的な現金収入が得られないために不足分の食料を購入することも難しい、また子供の高等教育への進学費用も払えないし、ドル高の変動為替のせいでインフレが進んでおり、自国内での製品生産能力が著しく低いことが手伝って近隣諸国から輸入する生活用品も石油もトランスポーテーションも何もかも高く、国民の生活を圧迫していることにある。
電気や水道のインフラが整備されている都市部では、ひどい時には数日間も続く停電や断水も国民の生活レベルを落とす要因の一つになっている。
国家レベルで見た場合には、輸出品の6割を占める葉タバコ(加工品ではなく、原料)は国際価格の変動に振り回され、一次産品の輸出に偏った経済構造と、国内に他の産業が発展していないことと内陸国であることによる物価高、減らせない輸入需要、並びに雇用口の圧倒的な少なさによる国民の現金収入源の欠如、深刻な外貨不足があげられる。
2012年に変動為替制への移行を実施したのは、同年、当時の大統領であるビング・ワ・ムタリカ氏が職務中に執務室で急逝したことを受け、副大統領から繰り上がった親米派の前ジョイス・バンダ大統領である。
ムタリカ大統領は、度重なるIMFの変動為替制度の採用勧告を頑なに拒否し、国際組織にNOを突きつける途上国の大統領としてユニークな存在であった。
輸出の増加と輸入需要の低下による外貨不足の解消を狙い、現地通貨であるクワチャを高い価値にて固定するのをやめ、変動為替制を採用して市場の調整能力に任せるべきだとのIMFのロジックに対して、植民地支配的な考えであると一蹴。
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