[比嘉陽子]【貧困からの脱却目指す大統領】~アフリカ“マラウイ”最新リポート 3~
Japan In-depth / 2015年10月19日 18時0分
世界の最貧国、アフリカのマラウイの大統領、ムタリカ氏のインタビューを精読すると(パフォーマンスなのか本心であるのか少々読みにくいが)、ドナーからの国家予算への援助獲得については諦めの色が見える。
ムタリカ氏の描くプランは、①海外プライベートセクター(民間)からの投資の獲得と、そのための国際経済システムへの仲間入り、②農業国家としての能力とパフォーマンスの向上、③農業以外の産業としての鉱業の発展と、そのための(全ての産業において必要となる)電力、道路、橋などのインフラ整備(特に電力に重きを置いている)であると読み解くことができる。
①について、海外からの投資を獲得するためには、ムタリカ(兄)時代のように国際システムへの参加を拒否するわけにはいかない。投資家と同じルールに立たなければ安心して投資が行われないのは明白である。
そのために、ムタリカ(弟)大統領は、変動為替制も、政府を縮小することで支出を削減することも受け入れる。この点では、前大統領のバンダ氏に近い政策に見えなくもないが、ムタリカ(兄)大統領時代に兄と共に動いていたことから国際システムに完全に従属するほどおとなしくも見えない。完全に市場任せにするわけではなく、政府の役割も重要だと発言している。
しかし何しろ、その政府に国家予算が無い。私が勤務する社会福祉省のコミュニティ開発県事務所の年間予算は、たったの15,500USDである。来年からは初等教育も有料化することになった。これにより、多くの国民が教育機会を逸するだろう。
しかし、希望もある。中央政府を小さくする代わりに、各県に権限を委譲した。地方自治体は、統治する村々の要望(wants)を、職員を配置して村人と共にニーズにまで昇華させる。それを具体的なプランに落として、次の行政レベルへ上げる(各村→村落委員会→地域委員会→県)。最終的に県で取りまとめたプランを、国のマスタープランに沿った範囲で、県が直接NGOや国際組織、各国ドナーらと、国家予算とは別の枠組みでプロジェクト単位の援助を取り付ける。
日々生活する中で国民の援助依存はいまだ根強いことを感じるが、上記取り組みにおいては国民の自助努力とプロジェクトへのオーナーシップを育成するトレーニングを同時に行っており、これが割とうまく回っているのだ。各村で自助グループ、ビジネスグループが立ち上がり(立ち上げられ)、運営上次々に直面する問題に対して自らで解決を試みている。大変良い傾向である。
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