【英国と中東諸国との間の「歴史問題」】~ヨーロッパの移民・難民事情 その5~
Japan In-depth / 2015年10月28日 7時0分
英国のトニー・ブレア元首相がCNNの番組で、イラク戦争への参加について、「情報が間違っていた」と明らかにし、参戦の判断は誤りであったと認め、謝罪した。
英国は1990年当時、イラクが大量破壊兵器を隠し持っているし、なおかつそれらを「45分以内に実戦に投入できる態勢を整えている」との情報を信じ込んでおり、当時のブレア首相は、いち早く米国と組んでの参戦を決断した。大規模な反戦運動も巻き起こったが、彼はこうコメントしている。
「50万人が戦争反対のデモに参加したと言うが、サダム・フセインに虐殺された人の数はもっと多い」
この情報というのが、実はインターネットでのみ流された、いい加減な話であったことが、後に暴露されたが、あの英国情報部や、狡猾なことで知られる英国外務省が、日本で言うなら「2ちゃんねるネタ」みたいな話を、本当に鵜呑みにしたのだろうか。
私はもう10年近く前に、ロンドンを訪ね(本来の取材目的は別件だったのだが)、当時『インディペンデント』紙の政治部記者で、ブレアの評伝も書いているジョン・レントゥル氏から、こう聞かされたことがある。
「サダム・フセインに関しては、もともとブレアは、いつかやっつけてやる、と考えていましたからね。あの大量破壊兵器の情報も、乗せられたと言うより、むしろ利用した可能性が高いですね」
これまで、真偽の程は定かでなかったのでメディアに公表したことはなかったが、今回ブレア氏自身が、半ば(つまり、あくまで情報の誤りとしつつも)認めたわけだ。
そもそも中東が政治的・軍事的にここまで混乱を極めた原因を突き詰めたなら、第一次世界大戦中の「三枚舌外交」が元凶だったと言って過言ではない。当時の中東は、オスマン帝国の支配下に置かれていたが、英国はまず、アラブの太守との間にフサイン・マクマホン協定(1915年10月)を結び、アラブ民族の独立を支持した。彼らの抵抗運動を支援したのが、有名なアラビアのロレンスである。
一方で、オスマン帝国崩壊後の中東を、英仏露で分割支配しようという、サイクス・ピコ協定を締結(1916年5月)。これは秘密協定だったが、1917年にロシア革命が起き、新政府=革命政府によって、その内容が暴露された。
そのまた一方では、パレスチナの地においてユダヤ人の自治を保証するというバルフォア宣言を発表した(1917年11月)。これはユダヤ財閥に戦争資金を出させるための方便であったと、衆目が一致している。
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