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[林信吾]【「ビートルズのEXILE魂」をご存じか】~ヨーロッパの移民・難民事情 その7~

Japan In-depth / 2015年11月12日 18時0分

[林信吾]【「ビートルズのEXILE魂」をご存じか】~ヨーロッパの移民・難民事情 その7~


先般、福山雅治の結婚がワイドショーを賑わせた際、彼の母校(長崎県出身)の音楽室には、ショパンやモーツァルトといった楽聖たちと並んで写真が飾られている、という話を聞き、笑いこけた。たしかにミュージシャンだが、モーツァルトに並ぶ存在とは知らなかった。あまり笑いものにすると、女性読者が怖いのでこれ以上は触れないが。 
もしこれが、ビートルズの写真であったら、どうだろう。

案外、彼らもそこまでの存在になったか、と感心したかも知れない。日本でも知らぬ人がいないほどの彼ら4人は、いずれも英国中西部の港町リバプールの出身である。ただ、4人とも「居残りアイルランド人」の子孫であることは、ほとんど知られていないのではないだろうか。

19世紀後半、イギリス=イングランドが産業革命以来の発展を続ける一方、当時植民地であったアイルランドは、度重なる不作に苦しめられ、多くの農民が土地を離れ、新大陸アメリカへと移民していった。

アイルランドに最も近い英国の港町がリバプールで、当然ながら多くの移民が上陸し、まずは労働者となって旅費を貯め、新大陸での成功を夢見て、再び海を渡って行った。

しかし、中にはリバプールで一定の生活基盤を得たり、逆に、その日暮らしで旅費も工面できない身の上となり、かの地に居着いたりした人もいた。彼らがアングロ・サクソン系のイギリス市民(前回の記事を参照)から、蔑視を込めて「居残りアイルランド人」などと呼ばれたのである。

彼ら自身は、エグザイルEXILEと称していたらしい。字義通りには亡命者だが、要は、好きで故郷を離れたわけではない「国外追放も同然の移民」といったことだろう。

そう言えば、日本で同名のグループが人気を博しているが、別段ビートルズやアイルランド系移民の故事を意識した命名ではなさそうだ。つまり、ビートルズという存在もまた、移民によって生み出されたのである。彼ら自身、自分たちの「アイルランド性」を否定していない。

そもそも4人のうち3人までが、レノン、マッカートニー、スターというケルト古来の姓を名乗っているし(ハリスンは北欧系と推察される)、ジョン・レノンなどは、息子にジョンJohnのアイルランド表記であるショーンShoneと名付けた。

また、Johnの愛称は、イギリス英語ではジョニーJonnyが一般的だが、アイルランドではジュードjudeが多い。ただ、有名なHey Judeという楽曲はポール・マッカートニーの手になるもので、Judeの意味も様々に解釈されている。

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