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[清谷信一]【仏同時テロ:無自覚な“文明的暴力”を批判せよ】~難民急増の深層 その2~

Japan In-depth / 2015年11月17日 11時0分

[清谷信一]【仏同時テロ:無自覚な“文明的暴力”を批判せよ】~難民急増の深層 その2~

欧米世論は(中東の)独裁者を倒せば、民主国家になると無邪気に信じて性急な「民主化」を求めた。メディアもそれを助長する傾向があった。そのような世論があったからこそ、欧州政府の中東への利権維持や武器の売却などが正当化されてきた。
だが現実はより悪い方向に向かった。60年代にアフリカで何があったかを思い起こせば、単純に独裁者を倒せばいいという、水戸黄門的な勧善懲悪は通じないことは明白であった。1960年は多くのアフリカ諸国の独立が行われ、「アフリカの年」と呼ばれた。ところがこれらの新興国では内乱や紛争、他国への戦争を含め多くの騒乱がおこり、極めて大きな数の民衆が命や手足、財産や住まいを奪われ、難民と化した。

その影にはかつての東側、ソ連や中国、キューバなどの介入があり、西側との代理戦争の形があったことも事実ではあるが、欧米諸国の旧植民地における利権の確保のための政治工作や介入もこれまた大きな原因であった。

ところが欧米諸国、特に西欧諸国の世論やメディアはこのような事実に目をつぶっていた。自分たちの中東やアフリカへの負の関与から目を背けて、自らを「善意の第三者」であるかのように振舞ってきた。そのような「善意」が現在の中東の悲劇や混乱、そして大量の難民やテロを生み出す原因となっている。正に「地獄への道は善意という敷石で舗装されている」という言葉そのものだ。

独裁が悪いのであれば、サウジアラビアやUAE湾岸諸国の人権(特に女性の人権)をないがしろにする「独裁国家」に対しても厳しい態度を取り、場合によって政権転覆の工作を行うべきだろう。ところが欧米諸国はこれら諸国と友好関係を結び、また自国兵器の優良顧客として遇していた。多くの武器を売り、利益をあげてきた。また自国に有利な投資なども行ってきた。その影には多くの収賄事件も起こっている。典型例はサウジアラビアに対する英国政府とBAEシステムズの収賄事件がその典型例だ。

本来「正義」を標榜するのであればこれら「独裁国家」も倒すべきだろう。また中国に対する姿勢も同様である。更にイランの核開発が核兵器の拡散であり、危険だと非難するならば、何故イスラエルが核兵器を保有していることを非難しないのか。イスラエルが核兵器を保有していることは公然の秘密である。

これらは俗にいう二重基準である。ところがそれに疑問を感じずに、無邪気に「西欧的主義こそが正義である」と信じて民主化を求めた結果が多くのテロを生む温床になっているではないだろうか。

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