[清谷信一]【仏同時テロ:無自覚な“文明的暴力”を批判せよ】~難民急増の深層 その2~
Japan In-depth / 2015年11月17日 11時0分
筆者は長年ジャーナリストして、また自ら企業を経営するビジネスマンとして長く、欧米(そして中東やアフリカ諸国)の人間と付き合ってきたが、未だに欧米の人たちは無邪気に悪気なく、自分たちの価値観こそが、古今東西、世界の価値観の基準であると無意識の内に信じていることを実感する。彼ら多くがその根底には悪意がない。悪意がない分悪質であるとも言える。他人は自分とは同じには考えないというアタリマエのことが理解できない。できないと、「異質」であるとか「悪」であると断定する。
今では欧米でも寿司や刺し身は日常的に食されているが、かつて我々日本人も魚を生で食べる=料理をしない未開人、といった視点で見下されていた。自分たちも生牡蠣やタルタルステーキを食べるにもかかわらずだ。このことを思いだせば容易に、彼らのメンタリティが想像できるだろう。
かつて90年代米国は陸軍向けに新型自走砲を開発していたが、その名称が「クルセーダー」(十字軍)である。このプロジェクトは中止されたが、実現してればサウジアラビアなど中東駐留米軍にも配備されたはずだ。十字軍といえばアラブから見れば悪鬼のような存在である。米軍関係者には悪意はなかったのだろうが、歴史と現地の感情に対する配慮がかった。だが現地の人間にしてみれば喧嘩を売られているようなものである。このような無自覚な「文明的暴力」を起こしていることを欧米人は得てして鈍感である。
本稿の目的は欧米に対する非難でも、またテロの原因は欧州にあるというものでなはい。筆者も欧州には友人、知人も、また取引先も多い。またイスラエルも同様である。彼らのことを真剣に考え、友人としては言いにくいことも言うべきだ。日本政府も単に欧米の対テロや報復に賛同するのではなく、このような事件の深層と分析し、また友人として彼らの問題点を指摘すべきだ。それが本当の友人だろう。
(この記事は、【仏同時テロ:中東独裁国家への歴史的介入が原因】~難民急増の深層 その1~
の続き。本シリーズ全2回)
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