[岩田太郎]【仏同時テロ:専門家が教えるテロ遭遇時の身の護り方】~身動きできない状態を回避せよ~
Japan In-depth / 2015年11月19日 13時20分
フランスの首都パリを、13日の金曜日に襲った「イラクとシリアのイスラム国」「イラクとレバント(東部地中海沿岸地方)のイスラム国」とも呼ばれる、テロ組織IS。コンサート会場やレストラン、スポーツ競技場が狙われ、一般市民が簡単にテロの犠牲になることが、「ニューノーマル」になるのではないかとの危惧が広まっている。
こうしたなか、ISは米国の首都ワシントンを次の標的として名指しし、米国では警戒レベルが引き上げられた。今回のテロでは、フランスをはじめ欧米各国が、イラクやドイツから事件直前に齎された予兆情報をうまく共有し、活かすことができなかった。政府が国民を守れないなら、市民は自衛策を考えるしかない。
こうしたなか、地政学研究のシンクタンクで、米国防・外交政策にも強い影響力を持つストラトフォー(本部・テキサス州オースティン)が、民間人がテロに遭遇した際の身の守り方や、心構えを伝授している。ストラトフォーは、「影のCIA(米中央情報局)」との異名をとる機関だ。
ストラトフォーの分析によると、過去のテロや銃乱射犯罪の犠牲者の多くは、怖れで身動きが取れなくなった人であったという。そのため、「(パニック状態で)次の行動が思い浮かばないことが命取りになる」と指摘する。
銃の乱射や爆弾の炸裂がすぐ近くで発生した時、「命をつなぐために最も大事なことは、身の回りで何が起きているかを即座に理解する能力だ」という。そうした能力を身に着けられるよう、公安や軍隊においては訓練が実施されている。
一般の人には、自動車の運転時の注意レベルに例えると分かりやすいそうだ。つまり、「ぼーっとしている」「ある程度注意を払っている」から、「焦点を合わせて注意している」「警戒している」に思考レベルを切り替えるのだ。「子供が飛び出すかもしれない」「隣で走行中の車がぶつかってくるかもしれない」「次に何が起こるか」と、常に最悪を想定して運転することが安全につながる。
身の回りで起こっていることに対してより敏感になれば、緊急時の対応がしやすくなる。劇場などに入れば、どこが出口でどう逃げられるか、あらかじめ頭の中で予行演習をすることを、ストラトフォーは勧めている。そして不測の事態が起これば、自分はどう行動するのか、常に計画を改定し続けるのである。
そうした際に大事なのは、テロリストの能力を思考に織り込むことだ。ストラトフォーによると、多くの人は緊急時に薄い壁の裏側や机の下に隠れようとする。だが、「テロリストはそんなものを、いとも簡単に撃ち抜いてしまう」のだ。
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