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[林信吾]【『共産党宣言』がロンドンで出版された理由】~ヨーロッパの移民・難民事情 その9~

Japan In-depth / 2015年11月27日 7時0分

サッカー談義はさておき、マルクスが「労働者は祖国を持たない」と断じたのは、やがて世界はブルジョアとプロレタリアの二階級に分断される、と考えたからで、その背景には明らかに、労働者の、国境を越えての移動が今よりずっと自由であったことがある。このことはマルクス自身が『共産党宣言』の中で、「ろくな路(みち)がなかった中世の市民にとって何世紀もかからなくてはできなかった団結も、鉄道を用いる近代プロレタリアは、これを数年にしてなしとげるのである」との論理を展開していることによって証明されよう。

しかし現実の世界は、そのようには動かなかった。19世紀の一連の市民革命によって「王家が支配するヨーロッパ」は事実上解体されたが、相次いで誕生した共和制国家においては、ブルジョアもプロレタリアもひとしく「国民」とされたのである。

私が、人・物・カネ・情報が国境によって隔てられるのは合理的でないと考え、

「国民国家などというものは、たかだか200年の歴史しか積み上げていない」

と繰り返し述べるのは、この歴史を踏まえてのことに他ならない。

マルクスの思想とはだいぶ趣を異にするのだが、私もまた、「地球が生まれた時から地面に国境線は引かれておらず、人間という生き物が本質的にどこかの国民であるわけではない」と考えている。だからヨーロッパの移民・難民事情に関心を持ち続けているのだ。

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