[西村健]【東京ブランドを問う、その2:公共性なきブランド戦略】〜東京都長期ビジョンを読み解く! その34〜
Japan In-depth / 2015年11月30日 18時0分
高層ビルがそびえる都会のジャングル。
電灯とネオンが24時間輝き続け、きらびやかなストリートを、着飾った男女が自信ありげに闊歩し、行き交う人たちに欲望、嫉妬、虚栄心をばら撒く。
ぶつかりながら、よろめきながら、周りを見ずには歩けない一方で、周りへの無関心さゆえの騒音、喧騒が東京の街に「盛り上がり」と期待感を夢見させる。
権力とカネを持った人たちは我が物顔で自由を謳歌し、際限のない欲望は肥大化する一方、組織の命令や立場に縛られた人たちは孤独に悩み、「身の程」という言葉に尊厳を奪われる。
嫉妬と欲望が渦巻き、カネの匂い、打算の臭い、クリエイティブの香りが奇妙な形で同居する東京。宮台真司氏がかつて言った「友達以外は皆風景」の東京は凄まじいスピードで今も進化し続ける。
そんななか、東京都は「東京ブランド」推進キャンペーンをはじめた。
東京ブランドとは何か。東京都の定義では、「東京は、古き良き伝統が受け継がれている一方で、最先端の技術が融合し、新しい価値を生み出し変化し続ける、世界でも類を見ない多様で魅力的な都市」だそうだ。なかなかよくまとまった表現である。
ブランドコンセプトは「伝統と革新が交差しながら、常に新しいスタイルを生み出すことで、多様な楽しさを約束する街」で、東京の体験価値は「東京の日常に根差した人・モノ・コト・街の魅力」ということらしい。
さらに、東京独自の価値は、「Unique(独自の伝統と先端の文化が共存し集積する東京)、Excellent(すべてが革新的で洗練されたクオリリティを持つ東京)、Exciting(常に変化し続けダイナミックで活力ある東京)、Delight(おもてなしの心や親切、誠実さに溢れている東京)、Comfort(あらゆるものが安心・正確・便利で快適に過ごせる東京)」だそうだ。頭文字を取るとUEEDCと、TOKYOになっていないのはご愛嬌か。
コンセプト、体験価値は一見、いい感じにまとまっている。非常に評価できるのかもしれない。しかし、よく考えてみると意味不明だ。そもそも東京の街が新しいスタイルを生み出すのではない、そこで働く人や生きている生活者や企業が結果として生み出す。街や地域など「箱」であり、「舞台装置」でしかない。街が主体など、奇妙な全体主義の視点のように思える。
さらにわからないのが独自の価値だ。
伝統と先端の文化が共存しているというが、どう解釈すればそのなるのか。どういった理由なのだろうか。あれほど繁栄した江戸の面影は、一部の観光施設・仏閣、江戸東京博物館と地名にしか見出せない。
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