[文谷数重]【MRJは世界市場で成功するか?】~楽観できない3つの理由~
Japan In-depth / 2015年12月2日 19時22分
そして販売力でも勝てるか分からない。先行するエンブラエル、ボンバルディアの2社には実績がある。また、同じ新参でも中国は交渉力で日本に優れている。中小国の航空会社は、半ば政府国営のようなものだ。外交で「中国機を買えば、その国の資源や製品を購入する」とか「中国国内市場への参入や投資を認める」とやられれば日本は太刀打ちできない。実績、販売力で劣位のMRJがどこまで健闘するか、やはり楽観視できない。
■ 失敗作のC-2とは違う
もちろん、この3つの問題は他国機と比較して極端な劣位でもない。そもそもMRJは空自C-2輸送機とは違い、生まれながらの失敗機ではない。
C-2では政治的なバイアスで要求性能を決めたため、中途半端な飛行機となってしまった。「国産開発以外に選択肢がないように」「特に、米C-17輸送機の輸入が選択肢に入らないように」輸送機性能を決めている。このため、2016年の配備前にもかかわらず、自衛隊の海外派遣のニーズに合わない、力不足な中途半端な飛行機となってしまった。
だがMRJは要求性能の設定は間違えていない。「世界市場で売るためにはどうするか」について、政治的バイアスなしにキチンと詰めている。この点で最初からの失敗機ではない。
仮に諸事順調に進めば成功しても不思議はない。本質的に筋の悪い機体ではない。大トラブルなしで実用化まで進捗し、燃費の優位性を確保し続け、販売が堅調となれば、それなりの成功は収められる。
だが、どこか一ヶ所でもコケればMRJの立場は危うくなる。その点でMRJ輸出は楽観視できない。もちろん多少の問題が発生しても国内市場は鉄板である。国の後押しがあり、付き合いで国内航空会社や自衛隊は買うだろうが、輸出規模は厳しくなる。日本は米欧露中のような影響圏を持たない。このため「多少難あり」でも付き合いで買ってくれる国はない。
* 浜本良一「次期五カ年計画で一人っ子政策中止」『東亜』2015年12月号(霞山会,2015.12)pp.40-.53
トップ画像:出典 三菱航空機
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