[安岡美佳]【デンマークを通り抜けるシリア難民】~日本は中東の難民コミュニティ支援を~
Japan In-depth / 2015年12月10日 23時0分
オーデンセ(デンマーク第三の都市)でのミーティングが終了し、午後14時頃、コペンハーゲンに帰宅する快速列車に乗り込んだとき、少し不可思議な感覚に囚われた。なんとなく空気が違う…。空いている席をさがして、車両を歩き回ってしばらくして、ようやくその違和感の正体が分かった。その車両と隣の車両の乗客のほとんどがシリア難民だったのだ。なぜ、空気が違うと思ったのか、理由は明確には見つからない。敢えて言うならば、奇妙な静けさと、なんとなく重苦しい空気が流れていたからなのだろうと思う。
欧州には、数多くのシリア難民が流入している。今まではトルコなどのシリア周辺諸国への流入が中心だったが、2015年より、特に受け入れを積極的に行っているノルウェー、スウェーデン、ドイツなどへ流れ着く難民の数は半端ないと言われ、11月の時点で人口700万人のスウェーデンに8万人が辿りついている。2011年に始まったシリア内戦は、今や国民の半数が難民として国外脱出しているという状況になっているのだそうだ。
同乗している乗客たちが、今テレビで連日のように報道されている「ドイツ経由でスウェーデンに向かっているシリア難民」だということにすぐに気がつかなかったのは訳がある。その人たちは「難民」というイメージからは程遠い姿・態度をしていたからだ。服装は、清潔感が漂い身なりも態度もきちんとしている。世代は様々で、今時の若者から、家族連れまでいて、高齢者はいない。首がすわってない子供を連れている若い家族もちらほら見かけた。顔つきは、どちらかというと、知的な印象を与える人が多かった。そしてほぼすべての人が、スマートフォーンを持ち、何かを調べたり、時々誰かと会話をしていた。
静かにデンマーク国鉄の4人掛けの席に腰掛けている家族は、状況が違えば単に小旅行を楽しんでいる家族だったかもしれない。ただ、静かにスマホを操作し、時々電話で話し、礼儀正しく腰かけている彼らの態度は、一見普通のデンマークの車内の光景だが、いうなれば静かすぎた。幼い子供もどこを見ているのかわからない表情で、静かに椅子に座っている。ラップでもやってそうな短髪の若い男性も、数時間のコペンハーゲンまでの旅を窓の外を眺めて過ごしていた。彼らの表情からは、何を考え幼い子供を連れ、スウェーデンやノルウェーを目指しているのか、推し量ることが困難だ。その車両は、本当に、異様に静かだった。
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