[宮崎愛子]【揺れるデンマーク:民主主義とは何か?】~EUに関する国民投票が示すもの その2~
Japan In-depth / 2015年12月14日 18時0分
二つ目は、国民投票の意義への疑問である。たしかに、ラスムセン首相も「今回の投票は、国民が一度立ち止まり考え議論できたとても重要な機会だった」と言うとおり、国民投票がデンマークおいて国民の政治への関心を高める役割を果たしているのは事実である。投票運動期間には政党ユース団体の活動など、デンマークの若者の政治参加の活発さにも驚かされた。しかし、上記に述べたように必ずしも国民全体に対してEUへの理解が深まったとは言えない。
また、国民投票の結果は国内政治だけでなく海外に与える影響も大きい。1992年のマーストリヒト条約批准をデンマークが国民投票で否決した際も、反EUの機運は欧州全体に広まりEU憲法の頓挫を招いた。今回の結果もイギリスが今後行うEU離脱に関する国民投票への影響が懸念されている。それにもかかわらず、賛成と反対どちらになるかわからない賭けのような国民投票に国の方向性を決める役割を与えることは果たして望ましい政治のあり方なのだろうか。
国民の政治参加というとき、多くの国民を巻き込むことだけでなく議論の質を上げることこそが求められているように思う。日本も近年はデモが次第に活発して民主主義の根付きとして喜ばしいことであるが、民主主義のあり方を今一度考える必要があるのではないだろうか。
(この記事は【揺れるデンマーク:EUとの関係は?】~EUに関する国民投票が示すもの その1~ の続きです。全2回)
【宮崎愛子】慶應義塾大学法学部政治学科4年。コペンハーゲン大学の政治学科に2015年8月から半年間留学中。高校時にも1年間AFSでデンマークに留学。専門は西洋外交史。北欧研究所インターン。
※トップ画像:メトロの階段に貼られた国民投票 賛成/反対のポスター ©宮崎愛子
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