[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート] 【2015年メディアの誤報大総括】~日本報道検証機構代表楊井人文氏~
Japan In-depth / 2015年12月19日 0時33分
今回の安保法案報道の特徴を「二極化」と楊井氏は評した。安保法案自体に賛成か反対かという点のみに焦点が当てられたが、事は国家の安全保障に関わる問題であり、安倍編集長は「賛成・反対で迫ってしまうにしてはあまりに複雑」と大切な議論が短絡的に終わったのは問題だとの考えを示した。
次に、2015年増加したBPO事案を取り上げた。楊井氏は、NHKのクローズアップ現代「出家詐欺」やテレ朝報道ステーションの「川内原発」報道などの放送倫理違反の話題を挙げた。今回の放送の2日前、テレビ朝日の世田谷一家殺害事件のスペシャル番組内で遺族が「恣意的な編集をされた」としてBPOに申し立てをした事例も紹介された。
楊井氏によるとBPOの放送人権委員会で審議中の案件は5件ほどあるとみられるという。「放送倫理」という言葉が目立った1年なのではないだろうか。安倍編集長が結論ありきのエンタメ性を問題とすると楊井氏も賛同し「未解決事件を解決することはいいことだが、小細工をしてトラブルを引き起こすことはもったいないことだ。報道被害者は我々の想像を超える心の傷を負う。(報道で)扱うときは慎重にしないといけない」と述べた。
今年最も大きかった誤報では、楊井氏は「イラクに派遣された自衛官の自殺率が非常に高い」との報道を「重大な誤報」とした。「イラク帰還隊員25人自殺、自衛隊期間中の数突出」という2012年9月27日の東京新聞の朝刊で報道された内容だが、「通常の5〜10倍(の自殺率)」とされた数値が誤報だった。「実際は(海外に)派遣されていない自衛官の自殺率と変わらない割合だった」と楊井氏は述べた。東京新聞が訂正文を発表したのは、GoHooの指摘後、今年の6月だった。
もう一つの誤報は、東京新聞2015年5月19日に報道された「オスプレイの事故率」アメリカ海兵隊の基準変更により、低い事故率に恣意的に引き下げ工作されていた、とされる内容だ。しかし実際はアメリカ海兵隊の恣意ではなく、米軍全体がすべての機種に適応する安全基準が変更されたことによるもので、オスプレイのみに的を当てたものではなかった。東京新聞の報道の元ネタは琉球新報が3年間で発表した約10本の記事。「読む方もちゃんと検証をしないと騙される」と安倍編集長は読み手の姿勢も大切であることを強調した。
「軽減税率について、メディアのあり方に一つ問題提起をしなければならない」と楊井氏は新聞も軽減税率8%の対象となったことを取り上げた。財務省が発表した給付案を、読売新聞が猛反対のキャノペーン報道をしたこと、新聞に軽減税率を導入することの是非を世論調査で質問していなかったことなどを楊井氏が指摘すると、「(新聞社が)政治と癒着していると思われても仕方がない」と安倍編集長は述べた。新聞に軽減税率を適用した場合の必要財源も、新聞は明確な数値を挙げず、欧州では新聞に軽減税率が適用されているのが一般的だという論を展開するのみだったことも問題として挙げた。
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