[神津多可思]【事態が進展する機運が生まれる】~特集「2016年を占う!」日本経済~
Japan In-depth / 2015年12月22日 23時0分
1年ほど前、乙未(きのとひつじ)の2015年は、せっかく展望がひらけてきたのに、さまざまな障害が出て、すっと前に進めない。必ずしも順風満帆というイメージではないというようなことを書いた。
2014年4月、8%への消費税増税が実施され、日本経済にとっては当初の予想を超える大きな負担となった。それでも景気拡大のモメンタムは途切れていない。「2年で2%のインフレ」は実現できていないが、これもまたその道筋が途絶えているわけではない。残っている課題は、財政再建のビジョンがなおはっきりせず、かつ政策としての優先順位が上がらないことだ。財政再建を急がなくても、当面何か不都合があると考えられていないことがその背景にある。さらに、高齢化が進む中で経済を活性化させるための諸制度の改革もなかなか進まない。
2016年は丙申(ひのえさる)の年だ。「丙」は、一が囲いの中に入るというかたちの字であり、本来は陽気がぐっと伸びることを示すという。また、「ひのえ」と読むことからも分かるように、火の意味も持っているとされる。したがって、物事がさらに進み、拡がっていく年とみることができるようだ。また「申」は、「伸」という字にも入っているように、さらに伸びていくことを表すらしい。両者を合わせれば、来年こそは成果が顕れてくるのではと期待してしまう。
緩やかな経済成長が続き、物価も次第に安定的なマイルド・インフレに落ち着き、その中で制度改革の効果が出て、財政再建に向けた動きもみえてくる。ぜひ、そういう年になってほしいものだ。ただ、それは黙っていて実現するはずもない。ことが前に進むというのは、必ずしも良い方向にばかりではない。長い目でみると悪い岐路に入り込む契機はここかしこにある。事態が進展する気運が生まれる時にこそ、一つ一つの正しい判断が重要だ。
2015年の試行錯誤の中で次第に明らかになってきたことの1つは、経済成長率もインフレ率も、当初の期待よりゆっくりしか動かないということではないか。これは、どの先進国にも当てはまる。その理由については、依然、さまざまな見方があるが、いずれにせよ現実はそのようだ。
理(ことわり)の論からすれば、政(まつりごと)の策が足りないからだとの主張もできよう。しかし、歴史を振り返れば、良策は常に理で説明できるものばかりではない。2016年、ことが前に進むのであればますます良策が求められる。無理をして短期的に成長率を高めたりインフレ率を高めたりすることが、本当により長い目でみた日本経済のためになるのか。その視点を忘れてはなるまい。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
政府が「骨太の方針」で掲げる「プライマリーバランス黒字化」は、もはや意味を失ってしまった
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月26日 6時20分
-
経済ニュースの大半はノイズ!? 経済評論家が教える「詐欺師に騙されない」たったひとつの方法
日刊SPA! / 2024年6月22日 8時50分
-
焦点:財政再建、「25年度PB黒字化」明記も玉虫色 骨太きょう決定
ロイター / 2024年6月21日 11時41分
-
BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏の視点「米経済はなぜ堅調なのか」
財界オンライン / 2024年6月13日 12時30分
-
FRB、金利据え置き 利下げ「年内1回」想定
ロイター / 2024年6月13日 5時58分
ランキング
-
1委託先のランサムウェア被害で京都府の159名分個人情報流出 自動車税の納税義務者名などがダウンロード可能な状態に 「クボタ」でも約6万件の顧客情報流出
ABCニュース / 2024年7月1日 20時14分
-
2「モスバーガー」2度目の中国撤退…「ハンバーガーを日本企業が中国で手がける難しさ」で定着できず
読売新聞 / 2024年7月1日 19時2分
-
3「7月3日の新紙幣発行」で消費活動に一部支障も? 新紙幣関連の詐欺・トラブルにも要注意
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 8時30分
-
4NY円、一時161円72銭 37年半ぶり円安ドル高水準
共同通信 / 2024年7月2日 7時42分
-
5中国企業、星野トマム売却 不動産不況で資産処分
共同通信 / 2024年7月2日 11時28分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)