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[清谷信一]【陸自の輸送防護車、高額な調達価格】~海外邦人救助に大きな懸念 その2~

Japan In-depth / 2015年12月26日 7時0分

この種のロードクリアランス車輌では南アフリカのチャービー・システムがその嚆矢であり、著名だ。これらはハスキーと呼ばれる車輌に地中レーダー、磁気探知機、IEDジャマーなどを装備しており、地雷を探知することができる。それでも見逃した地雷はハスキーが牽引するトレーラーで強制的に爆破する。チャービーは90年代からはボスニアなどの平和安定作戦でNATO諸国が採用している。米軍を始め多くの国が採用している。欧米ではこのチャービーをプラットフォームにして自社製の地雷探知システムをパッケージ化して販売している企業もある。

そもそもブッシュマスターが最適な選択だっただろうか。単に一度に多くの人員を輸送するなら別な手段がある。メルセデス・ベンツなどが拠点間の人員を輸送するために、一度に20名程度を輸送できる装甲バスを開発しているが、戦闘向けのブッシュマスターよりもこの種の装甲バスの方が、用途には向いている。

他の大型の4×4耐地雷装甲車は多数がある。例を上げるならば南アフリカのメカム社が製造しているキャスパーや、デネル社(旧BAEシステム・サウス・アフリカ社)が開発し米軍が採用したRG31、ドイツのクラウス・マッファイのディンゴ2、フランスのネクセター社のアルビスなどだ。



キャスパーは構造が単純であり、装甲外部にモジュラー化された駆動系が装着されている。このため触雷に際して修理が容易である。筆者は南アで実際に地雷に吹き飛ばされたキャスパーの修理のデモンストレーションを見たことがあるが、1時間ほどで駆動系を取り換え、新たな車軸とタイヤを装着して1時間も立たないうちに修理を完了した。より高級な足回りのブッシュマスターではこうは行かない。搭乗人員もブッシュマスターより2名多い。また調達価格も1~3千万円である。陸自の前回のブッシュマスターの調達単価は約1.75億円と極めて高い。



またRG31はより生存性が高く、全周的にNATO規格のレベル3~4の装甲を選ぶことができる。対して陸自の採用したブッシュマスターはレベル1だろう(オプションで防御力を上げることができるが)。搭乗員はこれまた10名と多い。調達価格はオプションにもよるが3千万円から1億円程度だ。

陸自のブッシュマスター調達単価は英軍やオランダ軍よりも高い。これは防衛省の悪癖である、計画無き少数調達のためだろう。メーカーや商社が利益を取るためは高めの値段設定するする必要があるが、それを負担するのは我々納税者だ。住友商事は輸送防護車の商戦では南アの最新式の耐地雷装甲車、RG35を提案する予定だったが、利益が取れないということで入札を辞退している。このためブッシュマスターの採用は事実上随意契約となった。頭を使えば、ブッシュマスターもより安く調達できたはずだ。

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