[渋谷真紀子]【ミュージカルで移民問題に警鐘】~“アリージェンス”俳優ジョージ・タケイの想い~
Japan In-depth / 2015年12月27日 12時0分
約一か月前のパリ同時多発テロ事件以来、世界の大都市同様、ニューヨークの繁華街ではテロ対策への厳戒態勢が続いています。そんな中、12月7日に米大統領選共和党候補者のドナルド・J・トランプ氏が、何が起こっているのかをわが国の指導者らが把握できるまで、イスラム教徒の入国を全面的かつ完全に禁止することを呼び掛けると発言しその後も話題になりました。
奇しくも日系人収容のきっかけとなった真珠湾攻撃の日に行われたこの発言に対し、日系人スターのジョージ・タケイさんは、自らの日系人収容所経験を題材に創られたブロードウェイミュージカル「Allegiance(アリージェンス:忠誠)」で、正しいアメリカの移民の歴史を知るようニュース番組や自身のFacebookページ(動画再生回数900万回以上)で観劇に招待し、劇場には彼の招待席へのカウントダウンの紙が貼られています。
Washington Postは、今こそ観るべきミュージカルだと取りあげ、日本でも、先日NHKのニュース7にて、彼がこの作品に込めた想いや今このミュージカルがアメリカにとって重要な理由について報道されました。私は唯一の日本人のクリエイティブチーム員(全米演出家組合より派遣)として、演出部にて制作過程に携わりました。
このミュージカルは、ジョージ・タケイさんが長年行ってきた人権運動の延長線上にあります。ブロードウェイという影響力のあるメディアだからこそ、全く日系人と接点がなかった人達にもこの語られてこなかったアメリカの歴史を認識してもらえる影響力があります。始まりは7年前に、ミュージカル“In the Heights”(ヒスパニック系移民の話)観劇後に、本作品の作詞・作曲・脚本家の中国系アメリカ人ジェイ・クオさんと脚本家・プロデューサーのイタリア系アメリカ人ロレンツォ・ティオーネさんに、移民の苦境として自身の収容所経験を話したところから。これまで様々なキャラクター設定やストーリー展開の改変を繰り返し、今の形に辿りついています。
アメリカではマイノリティの日系人の葛藤の史実をマス向けに伝える為の工夫の一つとして、「家族」という普遍的なテーマを軸にしています。「日系人収容」という事象に対して、米国政府に対して異なる立場を取った為に引き裂かれた家族を中心に、6人のメインキャラクターがいます。主人公はアメリカ人として戦った第442連隊戦闘団の英雄です。忠誠登録によって、アメリカ政府に忠誠を誓わずより条件の悪いトゥーリーレイク収容所監獄に送られた父(ノー・ノーボーイズ)、日系人の自由確保を求めて徴兵拒否をして政府と戦った姉のフィアンセ、家族や全てを奪われ政府に抵抗する姉と引き裂かれた家族、そして日系アメリカ人市民同盟代表としてワシントンD.C.に赴任した実在人物マイク正岡を描くことによって多角的に史実を表現しています。
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