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中国の“債務爆弾”に備えよ~特集「2016年を占う!」中国経済~

Japan In-depth / 2015年12月28日 23時55分

海外からの借り入れが焦げ付けば、世界の株式市場に衝撃が広がる恐れがある。中国側の統計によれば、対外債務は銀行融資・証券合わせて1.3兆ドルで前年比21%増と、これもまた膨らんでいる。1件でも「デフォルト」となれば、たちまち中国全体の債務の巨大さが国際社会で問題視されよう。ことに中国市場の不透明さが世界の混乱を増幅することは、上海株暴落時のケースから見ても明らかだ。

習近平政権は、16年から本格的に業務が始まる中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に活路を求めている。欧州やアジアなど主要国が参加したAIIBは一応、アジア開発銀行のような多国間国際金融機関である。その看板を掲げて国際金融市場から資金調達して、加盟国に融資し、そのインフラ設備を中国企業が受注するというシナリオだ。しかし、世界最大の資金の出し手である日本と、ドル金融の総本山米国が参加していないと、超低金利で長期のインフラ資金を調達するには障害がある。現に、AIIB債を発行しようにも、米格付け機関からの格付けを得られていない。北京はやむなく、韓国での縁故債募集で業務開始にこぎ着けようとしている。しかし、それでは、調達額は数億ドルにとどまり、初年度15億~20億ドル、5~6年後の年間1100億~150億ドル融資計画からはほど遠い。

となると、中国の債務問題緩和策は限られる。手っ取り早いのは人民元の大幅切り下げだ。そうすれば国内産業界の輸出増強とデフレ圧力を緩和できる。その元は16年10月から国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨となる。IMFは、元を数年後には変動相場制に移行させるよう求めているので、この際、管理変動相場制を放棄して、市場実勢にまかせるまま元安を放置すればよい。ところが、そうは行かない。資金流出は止まらず、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い支えざるをえない。「元安容認」となると、資本逃避に加速がかかる。外準は14年6月の4兆ドルから15年11月には3.44兆ドルまで落ち込んだ。約5兆ドルとみられる外国からの負債を考慮すると、外準はないのも同然だ。

米利上げを受けてドル相場は円、ユーロなど主要通貨に対して上昇基調にある。中国がドルにほぼ連動させる外国為替市場の管理変動相場制を続けると、元高によるデフレ圧力がかかる。今後、米国が追加利上げに踏み切ると、中国の債務不安はさらに深刻化する恐れが十分ある。

日本としては、中国の債務爆弾に振り回されないよう、16年には思い切った内需拡大策に踏み出すべきだ。年間80兆円の国債を買い上げる日銀緩和策も、民間の売却可能な国債保有額は約220兆円だから、限界が見え始めている。法人税実効税率の引き下げについては、外形標準課税の拡大など、事実上の増税との組み合わせだ。2017年4月の消費税率の10%への引き上げに合わせて、加工食品を含む食料品への軽減税率の導入を決めたが、消費税率2%分の年5.4兆円の消費者負担が1兆円程度少なくなるだけの話である。6〜7兆円の一般会計税収増からすれば3.3兆円の補正予算も緊縮財政の枠内だ。安倍政権が急ぐべきは緊縮財政・消費税増税路線の放棄である。

*文中図表:©田村秀男

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