[宮家邦彦]【これからの日韓関係に希望?】~特集「2016年を占う!」国際情勢~
Japan In-depth / 2015年12月29日 7時0分
今週のテーマは「2016年を占う」なので、今回は来週だけではなく、今後12か月間に世界で注目すべき点を書いていきたい。さて何から書こうか、と考え始めた矢先に大ニュースが飛び込んできた。28日にソウルで日韓外相会談が開かれ「慰安婦」問題の解決が確認されたという。
この決着について筆者は外国通信社の取材に対し、
“Both sides did all they can for a “strategic ambiguity” without compromising on their basic positions.” (日韓双方は基本的立場で妥協することなく、「戦略的曖昧さ」を作るために出来ることを全て行った)、
と答えた。
外交的には美しい決着だと思うが、キーワードは「削除された形容詞」と「ゴールポストの固定」だ。
岸田文雄外相は、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べた。河野談話では「軍が直接あるいは間接にこれに関与」とされ、2001年の小泉総理の手紙では「道義的責任を痛感」となっていた。要するに、直接、間接、道義的といった形容詞が今回全て消えているのだ。
更に、今回の妥結では問題の「最終的かつ不可逆的な解決」が確認されたという。韓国側は(少なくとも朴槿恵政権の間)ゴールポストを動かさない、即ち、この問題を二度と持ち出さない、ことを確認したことになる。でも、これで本当に大丈夫なのかなぁ・・・。
細かく突っ込みたい衝動はあるが、日韓が合意したというのだから、それで良いではないか。双方が国内的説明を妥協することなく、問題解決に向けギリギリの文言を選んだ結果がこの「戦略的曖昧さ」だ。この決着が長続きすればするほど、2016年以降の日韓関係には希望が持てる。
〇東アジア・大洋州
朝鮮半島以外で気になるのは中国だ。習近平体制は4年目に入る。外交面では2014年後半あたりから「強面」を止め「微笑」外交に切り替えたようだが、これまでの負の遺産を払拭できるのか。国内政治では反腐敗運動の結果生まれた政敵の「怨念」が顕在化するか否かも見物である。
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