[林信吾]【縄文回帰元年であれかし その2】 ~特集「2016年を占う」日本史から学ぶ~
Japan In-depth / 2015年12月30日 23時0分
縄文時代の日本列島では、自然と共存しながら豊かな文化を育み、1万年以上にわたって持続した独自の文明がかつてあった、と述べた。その精神に立ち返ったところに、21世紀の世界の未来像も描けるのではないか、と私は考えるのだが、具体的にどういうことか。
言うまでもないことだが、現代の日本人が、狩猟採集民に戻れるわけではない。
ただ、自然の恵みを生かして生きることと、文化的な生活を手に入れることは、必ずしも矛盾しない。縄文時代の研究が進むにつれ、そのことを世界の歴史学者や考古学者が、あらためて認識し始めた。この意義は限りなく大きい。
たとえばエネルギー問題だが、目下のところ一方的に、
「もう一度事故が起きたらどうするのか」
という心配だけで、ほとんど思考停止に陥っている人たちがいるかと思えば、資源に恵ない日本にとって、原子力発電は不可欠なのだ、といった主張ばかり繰り返す人たちが、もう一方にいる。
たしかに、福島の事故の反省から、世界一厳しい安全基準を作り上げたという事実はあるけれども、右のように経済効率の話ばかりしているようでは、
「リスクを負ってまで原発を再稼働させなくとも、目下電力は足りているし、原油価格も下落傾向にあるではないか」
と考える人たちを説得するのは、なかなか難しいだろう。核廃棄物の問題もクリアになったとは到底言えないし、原発推進派は、もっと中長期的な地球環境の視点(温暖化もまた、深刻な問題である)から論理を組み立て直す必要があるのではないか。少なくとも、原発のある暮らしが「トイレのないマンション」ではないということを、事実をもって証明しなければなるまい。
あくまでも私案だが、活断層だらけの地震大国で多くの原子炉を動かすより、地熱などをエネルギー源として利用する方向に、エネルギー政策を転換して行くのもひとつの選択肢であろうし、議論の余地はあるだろう。アイスランドのような成功例もあるのだから。
一方で、日本独自の風土や文化などといったことにはこだわらず、西洋文明からもっと学んだ方がよいのではないか、と思える面もある。
食糧問題が、そのひとつだ。
TPPともからんで、日本の食糧自給率の問題などが、ようやく注目されるようになってきたが、補助金を垂れ流して、農家と言うより農村票を守ろうとするような政策ではなく、思い切って減反政策などやめてしまい、米の増産に乗り出しつつ、余剰米は飼料として活用すればどうか。
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