[岩田太郎]【日米との和解で北朝鮮の核を中国に向けさせよ】~一発逆転のアジア外交 その1~
Japan In-depth / 2016年1月17日 18時0分
日韓両政府は12月29日、懸案の慰安婦問題について、「最終的かつ不可逆的な解決」を見たと発表し、この合意を日韓に強制した米国は発表を歓迎した。
しかし、これは問題に一時的な蓋をしたに過ぎず、必ず蒸し返され、逆に補償要求がアジア全体と欧米にも飛び火する。しかも、欧米など海外での見方は、合意後も韓国の対日中傷宣伝をそのままを受け入れた状態で変わっていない。
韓国は日本の「韓国政府は慰安婦問題の記憶遺産申請をしない」との認識を否定し、元慰安婦たちは、「東京の中心に慰安婦少女像を建てる」と鼻息も荒い。根拠なき相手側の誠意を信じる「戦略的な曖昧さによる最終解決」は、前の大戦で軍部や帝国政府が持った甘い希望的未来予測に似ており、大変おめでたい。
筑波大学大学院の古田博司教授は、「韓国を助けるな、教えるな、関わるな」という「非韓三原則」を唱えている。だが、いくら困った相手でも、隣人は隣人だ。さらに厄介なのは、困ったお隣さんが韓国に留まらず、韓国に宗主国と仰がれ、「アジアの新たな盟主」を自任する中国や、「暴れん坊」の北朝鮮など、東アジア全土に存在し、好ましくない近隣関係が膠着して、解決の糸口が見えないことだ。こうした硬直した状態は、日米安保体制を強化するだけでは打開できない。
ここで、我々は現在の東アジアにおける我が国の敵味方認識や朝鮮半島非核化の固定観念が果たして理にかなったものか、再吟味する必要がある。つまり、大胆に敵味方を入れ替えると同時に、北朝鮮の核弾頭を廃絶するのではなく、利用することで日本の国益を包括的に増進する可能性を検討するのである。
目の付け所は、中国にとっての朝鮮半島という、潜在的脅威だ。亡命先の韓国で2010年に亡くなった北朝鮮の元労働党書記、黄長燁氏は、「中朝を離反させよ」との「遺言」を残した。この「中朝離反」が、キーワードである。そもそも近年、中国が尖閣諸島や南シナ海で安心して侵略的行動に出られるようになった一因は、中国がロシアをはじめ、陸続きの国々との紛争を塩漬けしたことだ。
だが、地理的に北京の喉元に突き付けられた北朝鮮が日米の味方になり、現在は日米に向けられた核ミサイルが方角を変え、人口過密の中国都市部を狙えば、どうなるか。中国の関心は、再びその「弱み」である陸に戻らざるを得ない。
日本にとって幸いなことに、表向き小康状態の中朝関係は、長期的に見て根本的に改善しない。習近平政権が半島において韓国を最優先する政策や、北朝鮮の対中不服従が主因である相互不信が変わる見込みがないからだ。
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