[林信吾]【ロンドン五輪・赤字の原因:オリンピックの6個目の輪 その5】~経済・財政から見る五輪~
Japan In-depth / 2016年1月22日 23時0分
2012年ロンドン五輪の直接の収支は、開催費用23億8000万ポンドに対し、入場料収入やTV放映権料などが24億1000万ポンド。3000万ポンドの黒字だということになっていた。もちろんこれは、英国政府筋のプロパガンダに過ぎない。
多くを語るまでもなく、上記の数値はあくまで「直接の」数値であって、インフラ整備やテロ対策などの支出を度外視している。「本当の」収支は、そうした投資による経済効果を加味しても、なお赤字になったのだと前回報告させていただいた。
そんなことになった理由の第一は、当初想定されていなかった支出が多く、しかもその支出を圧縮(節約)できなかったことにある。たとえば、選手村の建設予定地として買収された,ロンドン東部のリー・バレー地区は、産業革命時代の産業廃棄物処分場跡地であったため、重金属やタール等による土壌汚染が深刻だった。その土壌入れ替えのためだけに、27億ポンド(私は1ポンド=200円で計算することを推奨している)という巨額の支出がなされ、なおかつその事実が公表されていなかった。2009年10月末、開催まで残り1000日となって、花火大会などのイベントが催されたが、まさにそのタイミングで、この支出隠しがマスコミに素っ破抜かれるというオマケまでついた。
第二は、話としては前後するのだが、2008年秋の世に言うリーマン・ショックである。選手村の建設費用として、民間からの協賛金10億ポンドを期待していたのだが、これが取らぬ狸の皮算用に終わってしまった。
窮余の一策として、宿舎を3人部屋にする案まで検討されたほどである。これはさすがに、各国の選手団からヒンシュクを買うだろう、ということで見送られたが、建設予算は大幅に削減され、なおかつ大会終了後は公営住宅に転用できるよう再設計されたため、有り体に言えば安普請になってしまった。
前回述べたとおり、1980年代以降の五輪は、TV放映権料とスポンサー収入に大きく依拠して運営されているが、これまたリーマン・ショックでどのような影響を受けたか、多くを語るまでもない。
端的な例を挙げれば、五輪担当相・主計総監であったテッサ・ジョウエル氏までが、
「これほどの不況に見舞われると分かっていたら、招致などしなかったものを」
などと嘆いたほどである。
当時英国の新聞のゴシップ欄を賑わした話題だが、エリザベス2世女王が、大学で経済学を講義する学者達を昼食に招いて、
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
NHK、34年ぶり赤字決算=136億円、受信料引き下げで
時事通信 / 2024年6月25日 20時37分
-
コロンビア政府、財政政策指針を発表、財政規律の順守を強調(コロンビア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月24日 0時40分
-
「積極財政派」「財政再建派」提言に見る希望と絶望 「PB黒字化目標」に代わる新たな財政政策の指標
東洋経済オンライン / 2024年6月18日 10時0分
-
円高より「円安」のほうがいいと髙橋洋一が断言する理由 「国内で円安を批判するのは国益に反する行為といえる」
集英社オンライン / 2024年6月10日 16時0分
-
農林中金が米金利上昇で5000億円赤字、リスク管理に甘さ
財界オンライン / 2024年6月4日 15時0分
ランキング
-
1那須2遺体 死亡夫婦の長女を殺人容疑で逮捕 店の経営権独占狙う?
毎日新聞 / 2024年6月27日 13時10分
-
2【速報】大学生が転落死した美人局事件「少年院送致」決定を不服とした少女側の抗告を棄却 大阪高裁
MBSニュース / 2024年6月27日 16時5分
-
3JR新宿駅で警察官が刺されたか “路上生活者の女”の身柄を確保
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年6月27日 10時44分
-
4元検事長の定年延長訴訟 原告側「100%勝訴。国会で真相解明を」
毎日新聞 / 2024年6月27日 16時50分
-
5繁殖用の小型犬3匹を殺した疑い、「行き場のない犬に対する責任取った」…「2匹はすでに死んでいた」と一部否認
読売新聞 / 2024年6月27日 11時8分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください