大学入試改革、中身の議論を~東京大学医科学研究所上昌広特任教授~
Japan In-depth / 2016年2月8日 23時34分
上氏は、「教員の目的の一つは、少人数教育の場合、アジェンダのセットだ。」と語り、そのために、人や教材を学生に紹介することが重要だと述べた。また、「インターネット社会では、Facebookやメールで、世界中どこにいても繋がる。コミュニケーション能力を持つ人は生産性が高くなる。」と述べ、これからの教育にはコミュニケーションツールを活用することも重要だという考えを示した。
大学入試改革は、中学や高校の教育にも影響が出るのだろうか。上氏は、「大きく出ると思う。ただし、どんなルールにしても中学、高校の先生はうまく対応すると思う。」と話した。
話題は変わり、日本の地域ごとの大学の在り方について。県ごとの公立大学の運営交付金の一覧を見ると、京都・宮城・徳島などが突出している。一番低いのは埼玉だ。理系が弱いところは低くなっている。医学部がない総合大学と医学部一つの予算額はほぼ同じであるため、医学部があるかないかで大きく違う。
予算額が大きいところ上位20の国立大学のうち、19の国立大学は戦前からある。上氏は、「日本の名門大学はほぼ戦前に出来上がっている。明治の勝ち組の地元に多い。それが生き続けている。」と分析した。明治維新から150年経っても未だにノーベル賞は西日本から多く出ている。「明治の姿を見ないと、今の大学は読めない。」と上氏は話した。
一方、文系でも面白いデータがある。芥川賞、直木賞の受賞者を見てみると、東北、近畿に多い。これは、江戸から明治の貿易ルートと密接に関係している。人の流通イコール情報流通であるため、貿易の要である場所で文化が発展する傾向にあるという。
東京大学が、アジアナンバーワンから転落したという報道があった。これについて、上氏は「東京大学自身、本当に日本で何をするか議論しなければいけない。」と話す。東大が落ちてきているとしたら、今、東大に何が足りないのかを考えなければならない。たとえば、東大を分割し、千葉、埼玉、神奈川に200億円規模のライバルとなる大学を作ることを上氏は提案した。
「私は一つだけ拠点を作るのはあまり効率的ではないと思う。試行錯誤しないとわからない世界になってきているときは、ライバルを多々作った方がいいと思う。」と上氏は自身の考えを述べた。上氏は、実際は東京一極集中になっていないが、東京一極集中と言われていることにより、高等教育で税金が非常に不均衡に分配されていることを問題視し、「どのように税金を分けるかは納税者が考えるべき。」と述べた。
上氏の話を聞くと、江戸時代の幕藩体制の影響がとても大きいことがわかる。「情報化社会が進んでいるような気がするが、実はあまり変わっていないかなと思う。」と古田氏は述べた。
統計や歴史を見てみると、今まで見えなかったことが見えてくる。その事実を認識したうえで、今後の教育を考えていくべきだろう。
(この記事は ニコ生 Japan In-depthチャンネル 2016年1月27日放送の内容を要約したものです)
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