1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

衝撃!「水素社会」は来ない その2

Japan In-depth / 2016年2月11日 21時54分

衝撃!「水素社会」は来ない その2


文谷数重(軍事専門誌ライター)


■ 貯蔵も難しい

輸送同様に、水素は貯蔵も難しい。

すでに指摘したように水素は嵩張る上、気体水素はリークが多く、液体水素は蒸発損が大きいためだ。

例えば、通常のガソリンスタンドで20気圧10立方メートルの貯蔵庫を作っても水素ガスを600kg程度しか保管できない。20気圧は大型エンジン起動用圧縮空気容器の圧力であり、人家の近い町中で扱うにはそのあたりが実用上の限界である。

その上、水素は逃げる。通常空気でも20気圧のタンクからは空気が抜け、圧力維持のため1日1回は圧縮機が起動する。水素は空気よりも粘性が低くバルブ等からリークし易く、パッキン等のゴムも浸透する。つまり水素はほっといても抜けてなくなってしまう。

液体水素で貯蔵しても、蒸発損は基本は水素タンカーと変わらない。実際には高度な断熱ができないことを考慮すれば、タンクでは常にグラグラと沸騰している状態となる。気化した水素はガスホルダーに貯めて供給すればよいが、その量を超えると破裂防止のため大気放出、つまり捨てなければならない。

つまり、水素は貯蔵には向かない。その点で水素ステーションといった発想そのものが筋悪ということだ。

■ 製造も難しい

そして、水素は製造も効率が悪い。

現在、水素を経済的に生産する方法は天然ガス改質しかない。せっかく採取した天然ガスを分解して水素にするものである。当然だが、生産された水素のエネルギー合計量は原料の天然ガスが持つエネルギー量よりも目減りする。

それなら天然ガスそのままで使うほうが良い。水素よりも輸送も貯蔵も容易であり、用途も広い。今でも圧縮天然ガスでバスは動くし、都市ガス(今はほぼ天然ガス)でも家庭での改質で水素を取り出し燃料電池に使うことができる。

ちなみに、電気分解は結構効率が悪い。電気分解のエネルギー効率は50%強である。燃料電池の効率もよくて50%。つまり電気分解で作った水素を燃料電池に突っ込んでも、最初の電力量の25%程度の電力しか得られないのである。

■ 液体燃料にしたほうがよい

もちろん、将来的に電力が余れば水素を作ってもよい。いずれは燃料代ゼロの太陽光や風力発電が今以上に普及し、同時に省エネが進む。当然電力は余る。そうなればそれを使って水素を作ることも悪くはない。

だが、水素をそのまま使うのは効率が悪い。既述のとおり輸送や貯蔵が厄介であるためだ。

現実的には、生産した水素は液体燃料製造に回したほうがよい。水素があればガソリン、軽油、灯油の製造が可能となる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください