北朝鮮ミサイルテストと安保理 その5 核・ミサイル開発阻止するには?
Japan In-depth / 2016年2月13日 23時0分
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
北朝鮮の核開発の狙いは自国の安全保障の確保である。核兵器は究極の殺戮兵器であり、また核抑止の手段でもある。敵である米国が核の威嚇、使用能力とともに極東地域に大規模な軍事力を展開している中、平和条約を結ばず、北朝鮮の安全保障を確約していない状況では自国の安全保障には常に不安がつきまとう。また、核兵器の保持は自国内での金正恩体制の維持強化に大きく役立っている。
今回の弾道ミサイルは射程距離が1万2千キロと推定されており、これは米国東海岸に到達する距離である。まだ弾道弾のリエントリー(大気圏への再突入)技術の克服には相当な時間がかかるとの見方が強いが、これは時間の問題ともいえる。
長距離弾道弾を持ち、小型の水爆を搭載できるようになれば、米国にとっても大きな直接的脅威になる。逆に、これは北朝鮮にとっては大きな軍事力となり、政治的立場をより強くするものになる。
では、北朝鮮にこれ以上の核・弾道ミサイル開発を阻止し、さらに、これを放棄させることは出来るのであろうか。現在の金正恩体制が存続する限りかなり困難とみられるが、それでもペースをスローダウンさせる、あるいは一定以上は開発を阻止する選択肢がまるっきりない訳ではない。
先ず、中国をより強力な経済措置に向かわせる工夫が必要となる。現在米国と韓国が話し合いを進めている戦域高高度地域防衛(THAAD)の韓国内における展開がある。この遊撃システムは弾道弾ミサイルを超高度のレベルで破壊できる能力があり、核抑止に影響力のある軍事技術である。
これは中国の一部が射程距離に入り、中国の核抑止力に影響が出る可能性があるため、韓国はこれまで対中配慮から韓国内配備には躊躇していた。THAADが配備されると朝鮮半島での緊張がさらに高まる可能性がある。これは中国にとっても懸念材料となる。
米国の特に金融面での圧力は中国の金融機関への強い圧力となる可能性がある。2005年に起きたマカオのバンコ・デルタ・アジア(デルタ銀行)問題では、北朝鮮が貿易決済や外貨獲得のために利用してきたデルタ銀行が米国から資金洗浄(マネーロンダリング)の疑いで米国銀行との金融取引ができなくなったことで、金融取引面における米国の影響力の大きさを見せた。次の安保理決議に金融政策面でより強固な措置を提唱することが中国への圧力にもなる。
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