「日本の報道」を憂う イラク北部の街から
Japan In-depth / 2016年2月14日 18時0分
久保田弘信(フォトジャーナリスト)
インド滞在中にNHK WORLDを見た。福島で連日数百万トンの汚染水が海に垂れ流されているというニュースだった。日本人で日本に住んでいるのに大量の汚染水が海に垂れ流されているのを知らなかった。
僕がインドに来てから流され始めたニュースなのかと思い、日本に確認してみると日本国内向けのNHKニュースでは汚染水のニュースは流されていなかったという連絡が来た。
NHKは先進国日本を代表する報道機関として福島原発事故のその後を報道する義務がある。NHK WORLDはその義務を果たし、世界に福島の現状を伝えている。しかし、同じニュースを日本国内に伝えないのは何故か。
現在、僕はイラク北部の街アルビルに滞在している。北朝鮮が打ち上げた「ロケット発射」のニュースはこちらで見ることができる英語ニュースBBC、アルジャジーラ等で連日報道されている。両局はロシア戦闘機のシリアへの空爆についても連日報道している。
数百どころか数千チャンネルある衛星放送の中からようやくNHK WORLDを発見した。 もちろん、NHK WORLDでも北朝鮮の「ロケット発射」のニュースを報道していて、アナウンサーは何度も「ロケット」という言葉を使っていた。ところが、同じニュースが日本国内に報道される時NHKは「ロケット」ではなく「ミサイル」という言葉で報道されている。
実際に衛星軌道に達したことを考えると今回はミサイルでなく「ロケット」であったわけだ。海外のニュースも日本のニュースも今回の「ロケット」発射実験によって将来的にICBM(大陸間弾道弾)の開発が危惧されると伝えている。北朝鮮の核開発、ミサイル開発には近隣国家の日本として注目するのは当然だし、最悪の状態を避けるために迎撃態勢を整えるのは必要なことだと思う。
しかし、今回のロケットは今まで北朝鮮が日本海近郊に落としたミサイルとは軌道も初速も違う。衛星軌道に達したことで今回のロケットは最低でも秒速7.9Km、時速にすると28,400km以上の速さで飛んで行ったことになる。衛星軌道を目指して打ち上げたとしても地球の自転があるため、下から見れば日本の南方への軌道となる。 多段式ロケットのため4つほど落下物があったらしいが、宇宙空間へ向かって飛んでいくロケット本体の迎撃は不可能だ。
ちなみに北朝鮮と日本の距離はおよそ1200キロ。 もし北朝鮮からミサイルが日本へ向けて発射された場合、東京あたりに着弾するまでの時間は8~9分程と予想される。 果たしてイージス艦のSM-3とパック3で迎撃が可能かどうか、それは発射をどれだけ早く探知できるかどうかにかかっている。
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