米・最高裁判事急逝の波紋〜米国のリーダーどう決まる? その4〜
Japan In-depth / 2016年2月16日 0時30分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
この週末に飛び込んできたニュースは、大統領選挙よりずっと長くアメリカの行く末を左右することになるだろう。米連邦最高裁判所のアントニン・スカリア判事が急逝したのだ。
スカリア判事は、1986年にレーガン大統領に指名された保守派の論客である。法曹界の人間としての彼の矜持は「米国憲法はそれを書いた当時の建国の父たち、あるいは訂正が加えられた時点での意図で解釈すべき」というものだ。結婚や死刑など、古くからある法的制度に関してはそれで済むが、LGBT人権、国民皆保険制度、環境問題など近代になって持ち上がってきた問題に絡む訴訟では、リベラル寄りの多数判決に猛然と少数反対意見を書く人物だった。
今まさに進行中の大統領選挙で、熱狂的な支持を集める共和党のドナルド・トランプや民主党のバーニー・サンダースが怪気炎を挙げているのも、2人に共通する「ロビイストや大企業の多額献金で回る選挙戦に屈しない」という公約が保守進歩両方で投票者の心を掴んでいるからだが、その原因を作ったのが、まさにスカリア判事が2010年に多数意見判事として名を連ねた「シチズンズ・ユナイテッド」判決(会社法人に言論の自由があるとし、結果として多額の政治献金が違法ではなくなり、スーパーパックと呼ばれる献金運動が盛んになった)なのだ。
スカリア急逝のニュースを受けて、オバマ大統領がホワイトハウスで彼に捧げる哀悼のスピーチをする前から、共和党の大統領候補たち(トランプ、テッド・クルーズ、マルコ・ルビオら保守派の票を狙っている候補は特に)は、オバマ大統領に次の最高裁判事指名をさせるまじと口角泡を飛ばして、議会はこれを絶対阻止しろだの、わざと遅らせて次の大統領が指名できるようにしろと牽制しているが、そんなことを素直に受け入れる与党ではない。オバマはさっそく人選を進めているであろう。マスコミや政治アナリストで挙がっている名前で有力視されている人物はこんな感じだ。
スリ・ルリニヴァサン(テクノロジー問題に明るいとされるインド系の高等裁判官)
ポール・ワットフォード(ギンズバーグの弟子でもあった黒人の高等裁判官)
ジャックリン・グイエン(NYタイムズが挙げたベトナム系女性高等裁判官)
コーリー・ブッカー(ニュージャージー州の現役上院議員)
シェルドン・ホワイトハウス(ロードアイランドの法務長官も務めた上院議員)
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