「勝つのが仕事」先駆者が語る(上)プロ野球選手のセカンドキャリア その5
Japan In-depth / 2016年2月18日 18時0分
22年目の秋。43歳で巨人を電話一本で解雇された。
−キャッチボールの心
トレーニングコーチとして極める道もあった。
が、阿野はサラリーマンの道を選んだ。生家が商売をやっていたこともあるが、子供の頃から珠算も得意。
「全く新しい道を行くには、今しかない」恩師らに相談したものの、迷いはなかった。
全く新しい生活。満員電車に戸惑う。建築物の図面は読めない。まだ仕事も覚えきれてないのに、一人で一つの現場の全工程(受注、職人手配、安全・行程管理、請求書作成など)を担当しなければならない。営業でコンクリートの上を歩き続けて、ひどい肉離れを起こした。溶接で目を焼いてしまうなど、不惑の年を過ぎてから、あまりに過酷な“次”の滑り出しだった。頑張れたのは、
「しっかりカタチに残るこの仕事に、大きな魅力を感じていた」からだ。
自分なりに工夫をして、必死に取り組んだ。取引相手など、出会った人間の名前を必ずフルネームで覚える。現場にとことん付き合う。自分の現役時代のキャリアを、いい意味でとことん活用するなど、これから新しい道に進む若者にも役立つ基本だ。今も昔も変わらないと話す。
そして、どんな仕事でも、何よりも“キャッチボールの心”が大切だという。これは、V9監督・川上哲治からの教えだ。
「ボールは自分からは相手の捕りやすいところに投げ、相手から難しいところに返って来たら、からだ全体で受け止める」。
野球も、ビジネスも。
(文中敬称略。「勝つのが仕事」先駆者が語る(下)プロ野球選手のセカンドキャリア その5 に続く。全2回)
<阿野鉱二氏 経歴>
大阪・明星高等学校で、1963年夏の甲子園に全国制覇、翌年連続出場。1966年4月に早大進学。東京六大学リーグで2度の優勝。同期の小坂敏彦投手とバッテリーを組み、68年秋季リーグ優勝。自身も首位打者となりベストナインに選出。リーグ通算57試合出場し184打数52安打、8本塁打、24打点、打率.283。同期に谷沢健一、荒川尭らがおり、自身も含め7人がプロ入り。69年のドラフト2位で指名され、巨人入団。71年には一軍で49試合に出場。森昌彦の後継を吉田孝司と争うが、75年の巨人ベロビーチキャンプで重度の腹膜炎を起こし、76年にオフに現役引退。引退後は巨人バッテリー兼トレーニングコーチに就任、85年よりトレーニングコーチ、1991年退団。現在は建設業スチールエンジ株式会社相談役。ビーアーム株式会社取締役会長。「巨人軍のストレッチング」(ベースボールマガジン社)、「勝つのが仕事!」(風人社)を出版。トレーニングコーチの草分け的存在。
トップ画像:ビジネスマンとしても大成功を収めた阿野鉱二。「野球もビジネスもキャッチボールが基礎の基礎」と話す。©神津伸子
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