疑心暗鬼の国際金融市場 世界経済の方向性示せ
Japan In-depth / 2016年2月21日 18時0分
神津多可思(リコー経済社会研究所 主席研究員)
「神津多可思の金融経済を読む」
国際金融市場の動揺が続いている。昨年末以来、市場参加者の様子見気運(いわゆるリスクオフ)が高まり、世界で株価が急速に低下した。背景には新興国経済減速に対する懸念があるとしばしば指摘されるが、何もそれは最近になって分かったことではない。しかし、これがマーケットなのだろう。先行きへの心配が一度盛り上がると、行くところまで行かないと止まらない。
その懸念がどのあたりで収まるかということも事前には分からない。そのような不確実性が、企業や家計の行動に影響を与え、経済活動が抑制されるということはこれまでしばしば起きてきた。事態がひどくなる前に先手を打ちたいという政策当局の心境も分かる。
実際、日本では予想外のマイナス金利になったし、マイナス金利の先輩である欧州では、この3月にさらに拡大することもほのめかされている。
国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しをみても、2015年、2016年のいずれについても、当初の見通しよりも下方修正されてきた。両年とも当初は世界全体で4%程度の成長になるとみていたが、時間の経過とともに修正され、この1月時点では、2015年は3%程度となっている。2016年はまだ3%台半ばだが、これもやがてさらに下方修正されるだろう。
世界経済は、金融危機前の4%台の成長にはもう戻れないと覚悟せざるを得なくなったということだ。そうなると、4%成長への回帰を前提にした投資プロジェクトは成立しなくなる。どの投資がペイし、どの投資がペイしないか、よく考えなくてはならない。それでリスクオフの動きが広がる。
他方、2008年の国際金融危機以降、世界的に超金融緩和が続き、その下で生み出されたマネーは膨大となっている。そのマネーがとりあえず様子をみるために、より安全で、将来すぐ別の資産に変えることができる金融商品に向かう。その代表例が主要国の国債だ。
国債が欲しい人が増えれば、利回りが下がり、長期金利は低下する。また、より安全な国の国債へと資金が向かうので、そういう国の通貨は切り上がる。長期的にみた財政再建の展望がなかなか拓けない日本だが、その国債はまだ様子見のためのマネー滞留の対象となっているようで、円高も進んだ。
しかし、ちょっと落ち着いて世界経済を点検してみると、もはや世界同時不況と悲観するほど、悪い材料ばかりでもない。確かに、中国を筆頭に新興国経済は、成長率が下がり、これまで増やしてきた負債の圧縮という課題にも直面している。しかし、それでもマイナス成長が予想されているわけではない。
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