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アップル「ロック解除問題」の真実(上) “情報提供に躊躇なし”

Japan In-depth / 2016年2月22日 18時0分

アップル「ロック解除問題」の真実(上) “情報提供に躊躇なし”

 岩田太郎(在米ジャーナリスト)


「岩田太郎のアメリカどんつき通信」


昨年12月にカリフォルニア州サンバーナーディーノ郡で14人が死亡した銃乱射事件のサイード・リズワン・ファルーク容疑者(28)が、雇用者であるサンバーナーディーノ郡政府より貸与されて使用していたiPhone 5cのロックを解除するよう、連邦地裁が米アップルに出した命令に同社が従わなかったことが、波紋を広げている。

共和党のサウスカロライナ州党員大会で2月20日に圧勝したドナルド・トランプ大統領候補はその前日、「アップルが政府側の要求に従うまで、同社の製品をボイコットせよ」とツイッターで呼びかけた。だが間抜けなことに、そのツイートを自身のiPhoneから行っていたことがバレてしまい、大恥をかいた。

こうして憎まれ者トランプ氏の「敵」となったアップルは一躍、「人々のプライバシーの権利を守るため、権力に立ち向かうヒーロー企業」の地位に祭り上げられた。インターネットのプライバシー権擁護団体「ファイト・フォー・ザ・フューチャー」は2月17日、サンフランシスコにあるアップルの旗艦店の前に集まり、同社への支持のデモを行ったほどだ。

だが、アップルは裁判所命令などによる政府機関への顧客データ提出を拒否したのではない。政府が自由にiPhoneに侵入してデータを吸い上げられる万能鍵「バックドア」をオペレーションソフトであるiOSに埋め込めという命令を、「そんなことをすればiPhoneが売れなくなる」との商売上の理由で拒否しているだけで、実際には多くの顧客データを政府に渡し続けているのだ。

アップルが公表したデータによると、2015年1月から6月までの半年間で、同社は政府から971件のプライベートな顧客データ提出命令・要求を受けた。その内、81件に関して、アップルは命令に服従して顧客データを提出している。

また、同期間中、端末購入・登録・修理・アップル提供のサービス利用履歴などの「端末情報」に関して3824件のデータ提出命令・要求があり、3093件について従った。なお、「端末情報」は、盗難にあった端末を警察が特定するため使われることが多い。

このように、プライベートなデータを含む多くの顧客情報がアップルから米政府に渡っているのである。また、今回のファルーク容疑者のプライベートなデータについても、アップルは同容疑者が10月19日にiCloudへクラウド・バックアップした分については、すでに当局に提出済みだ。繰り返すが、アップルは顧客の個人情報を当局に提出することに躊躇はしない。

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