トランプに四苦八苦の共和党 米国のリーダーどう決まる? その6
Japan In-depth / 2016年3月1日 15時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
初戦のアイオワ州では敗れたものの、その後のニューハンプシャー、サウスカロライナ、ネバダでの予備選挙で3連勝したドナルド・トランプ。その彼の快進撃はもう止められないのだろうか?
政治家としての経歴が全くなく、長年の共和党員でさえないこの自称不動産王が、このまま3月1日の「スーパーチューズデー」(14の州で同日に予備選挙が行われる)で大統領候補としての地位を確固たるものにするのか、共和党は今まさに背水の陣に立たされていると言っていいだろう。
共和党内部にはこれまで2つの勢力があった。世襲議員を重んじ、ひたすら減税と小さい政府を求める「エスタブリッシュメント」と呼ばれる主流派がそのひとつ。かつて親子のブッシュ政権を擁立し、4年前にミット・ロムニーを推すことで党内を取りまとめてきた。
今回の選挙ではジェブ・ブッシュを候補として大統領選に臨み「ブッシュ対クリントン」という政治家ダイナスティー同士の戦いとして勝利する筋書きを描いていた。ところが、圧倒的な政治献金をいくら投入してもブッシュの支持率はヒト桁に留まり、共和党有権者がいかにこれまで通りの大統領候補を決めようとしても、有権者は誰も信用しなくなってしまったことに最近ようやく気がついた。
そして、近年、そのエスタブリッシュメントが囲い込んできたのが「お茶会派」と呼ばれる保守層だった。福音派キリスト教徒が多く、価値観も保守的で、中絶、LGBT公民権、銃規制、健康保険制度改革などにことごとく反対しており、いわゆる「反知性主義」な価値観を持つ層だ。
エリート臭をぷんぷんと漂わせた主流派と、そのエリート教育を信じないお茶会派がひとつにまとまるどころか、どちらにも属さない鬼子ともフランケンシュタインを産んだとも表されるのがドナルド・トランプという人物だ。
その主張を聞けば被害妄想も甚だしいファシスト的で共和党でさえないのだが、彼のスピーチに熱狂し、数々の暴言に「本音を言ってくれている」と感じ、着々と大統領に祭り上げようとする国民がこんなにも多くいた、という事実を突きつけられていちばん戸惑っているのが主流派、お茶会派を問わず、良心ある共和党員だろう。
これまででいちばん的を射ていると思われた表現が「トランプは抗がん剤」というものだ。従来の二大政党政治というガンに侵されたアメリカの命をつなぐには、抗がん剤治療しかない、つまり健常な細胞も破壊し、副作用も大きいが根本的な治療にはもうこれしかない、と考える人が多いということだ。
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