トランプ・サンダースの「ガス抜き」終了
Japan In-depth / 2016年3月3日 14時0分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
米メディアは、民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補が、それぞれの党の指名を受け、この秋の大統領選で一騎打ちとなると予想し始めた。
CNNなどが3月1日に発表した世論調査によると、本選での組み合わせがクリントン候補とトランプ候補である場合、有権者登録した回答者のうちクリントン支持が52%、トランプ支持が44%と、大きな差がついている。
ここで、民主党対共和党という枠を離れ、職業政治家と政治の素人の戦いという観点で見ると、トランプ候補の本命化に大きな役割を果たしている無党派層が、同時に素人に危うさを覚え、職業政治家支持に傾いている様子が読み取れる。
誰もが泡沫候補に過ぎないと過小評価していたトランプ候補は、共和党の大統領候補指名獲得に向けて王手をかけた形だが、今が彼の絶頂であり、素人対プロ政治家の戦いの中でボロが出始めるだろう。
現在の大統領選は人気投票に近い予選の段階であり、大統領候補にふさわしい性格・政策・経験が吟味される本選とは条件が異なる。予選段階では、国民の間に溜まっている不満を思いっきり吐き出させ、4年に一度の「ガス抜き」が行われる。経済格差の解消を訴える民主党のバーニー・サンダース候補や、排外的な暴言を止めないトランプ候補は、まさに不満の引き受け役を演じるのにふさわしい役者である。
だが、冷静に考えれば、サンダース候補の社会民主主義的な思想は米国では主流となりえないし、予測不可能なトランプ候補が米国の大統領になることは、強力な米財界や共和党員たち自身が止めるだろう。
まず、トランプ候補の性格が問題だ。訴訟好きで、気に入らない者に裁判の脅しをかけて黙らせようとする。そうした脅しは、過去10年で、確認されているだけでも15件。実際の訴訟に至ったケースも何件かある。そのような短気で衝動的な者に、米国民は核ミサイルのボタンを委ねるだろうか。敵を増やすことを好む「トランプ大統領」は、政治に必要な話し合いや協調ができるのだろうか。
対するクリントン候補は、財界との深い関係で有名だ。そうしたクリントン候補に、少しでも左寄りの政策を標榜させるよう仕向けるのがサンダース候補の真の役回りだが、公約と実際の政策実行は別物だ。そもそも、米財界は共和・民主両党の候補たちに多額の献金をしており、誰が勝とうが、大企業の利益は守られる仕組みになっている。サンダース候補とは違い、「クリントン大統領」は、現実路線を採ることになろう。
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