トヨタ・ダイハツ・スズキ新三角関係 その2
Japan In-depth / 2016年3月5日 12時0分
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
2 トヨタの固定費膨張とTNGAの路線変更?
トヨタ最大の強みであり、かつ弱みでもある点はその“大きさ”です。自動車産業で勝ち抜くためには、昔から400万台クラブだ、1,000万台クラブだと言われるように、スケールメリットを最大限に生かし、いかに台数を多く売ってコストを削減できるか、という点が最重要になります。その一方で、世界販売が1,000万台という水準に近づき、またこれを超えると、全く未知の世界が見えるようです。即ち巨大であるが故の負の側面です。
特に固定費が問題で、具体的には人件費・減価償却費・開発費・販売費などがこれに当たります。販売費などは本来なら変動費ですが、販売台数がある一定の水準以上に到達した場合、これを維持してようとして、さも固定費のように存在し続けます。2016年3月期の第3四半期決算で、トヨタの営業利益は前年同期比5.3%の減益となり、期待されていた増額修正を見送り、日本企業で初めての3兆円という利益水準が遠のいたように見えます。減益要因として挙げられた主要因が、諸経費の増加という項目でした。問題はここです。
実はトヨタはプリウス以下の小型車の分野に於いて、利益は殆ど出ていないと思われます。多くの小型車では赤字体質から脱却が出来ていないとも言えます。1月末のダイハツとの共同記者会見に於いて、豊田章男社長も、トヨタは小型車の開発・生産が必ずしも得意ではない、とはっきり明言しています。トヨタの従来からの利益の柱は日本のクラウンであり、米国のカムリ、レクサス、SUVです。
タイや中国・ロシアなど、一時は利益を下支えした新興国地域もありますが、それは市場が大きく伸びシェアがダントツで特に大型車が良く売れ、為替も安定していた時代のこと。今は市場の低迷に加え、競争激化・小型車への傾斜し、円高も進行したことで、利益率は従来に比べ大幅に低下しました。国内ではクラウンの新車を売るだけでなく、その後の保険・車検・定期点検・部品交換なども含め、ユーザーは固定顧客・リピーターとしてトヨタの国内利益を下支えします。
米国ではカムリや多くのSUVがこれに当たります。自然とトヨタの車づくりは利幅が取れる大型車が中心となり、その製造・開発コストが高くなり気味です。トヨタの小型車作りは、これら中・大型車の物作りをベースに、下に下していく方向です。コスト削減や合理化効果では定評のあるトヨタですが、小型車をいかに低コストで作り上げ、なおかつ利潤を上げるというのは、大型車に傾注したメーカーにはなかなか不得手となります。
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