バブル期の日本を忘れない人々 米国のリーダーどう決まる?その8
Japan In-depth / 2016年3月11日 9時7分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
アメリカの大統領予備選挙では、着々とトップランナーのドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが選挙人を獲得している。大きな番狂わせがなければ2人ともこの夏の党大会までに候補指名に必要な人数を従えて臨むことになるだろう。
だが、3月8日に行われた民主党レースでひとつ、日本に無関係とはいえないできごとがあった。たとえ接戦になったとしてもクリントンが勝つと予測されていたミシガン州で、バーニー・サンダースが僅差で勝利を収めた。
ミシガン州といえば、デトロイトやフリントなど、かつて自動車産業で栄華を極めた地方都市があるところだ。ジェネラル・モーターズやフォードといったアメリカを代表する車がこの地で組み立てられ、全米中、世界中に輸出されていった。だがその繁栄はいま見る影もない。オバマ政権が2009年に100億ドル規模の財政援助をしていなければゴーストタウンになっていただろう。
予備選挙の直前まで、フリントの町を揺るがすニュースは水道インフラの鉛汚染のニュースだった。スラム化が進む一方のフリントでは、自治体が破産寸前で2011年に就任したリック・スナイダー州知事は緊急予算委員と称して、自分の息の掛かった側近を次々と要職に送り込み、徹底的に予算をけずりまくった。住民が選挙で選んだ代表を押しのける、という民主主義の基本に反する形で。
フリントの住民の飲料水は五大湖で2番目の湖水面積を持つヒュロン湖から水を引き、代金をデトロイトに支払っていた。安定して綺麗な水源だ。それを2年前、汚染で知られるフリント川の水に切り替えた。フリント川の水でもちゃんと処理をすれば飲料水として問題はないが、そのままだと湖水より20倍も腐食性が高い。フリントの水道パイプはインフラ自体が古いため、今では禁止されている鉛を使ったパイプが残っている地域が多かった。ヒュロン湖水では大丈夫だったこのパイプに含まれていた鉛がフリント川の水によって解け出したのである。
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