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エネルギー問題はなぜ難しいのか?

Japan In-depth / 2016年3月18日 21時0分

例えばEnergy Securityの観点から自給率を上げるため、再生可能エネルギーを至急拡大すれば、再エネはまだコストが高いのでEconomyの観点からは課題が生じます。逆にEconomyの観点から、化石燃料の中では最も安価な石炭火力発電をどんどん増やせばEnvironmentの観点からは課題が生じます。あっちを立てればこっちが立たない、いわゆるトレードオフの関係において、どの価値観をどこまで追及するかのバランスの議論なのです。

<日本のエネルギーのいま>

日本のエネルギー政策は東京電力福島原子力発電所事故により、ひっくり返ったといっても過言ではありません。

震災前、民主党政権は「2020年には1990年比▲25%」という野心的に過ぎる目標を掲げました。日本のような先進工業国では排出される温室効果ガスの9割はエネルギーの利用に伴って排出されますので、その温暖化目標を達成するには、エネルギーの低炭素化がカギとなります。発電するときにCO2を排出しないのは再生可能エネルギー(水力発電含む)と原子力発電です。そのため2010年当時の政府は、2030年の電源構成として、不安定性やコストの点で課題がある再エネを2割まで増やし、原子力を5割にまで増やす計画を立てました。

「温暖化対策に積極的に取り組む」という姿勢を批判する人は少ないでしょう。しかし、そのために何が必要なのかまで説明し、コンセンサスを得なければその政策は長続きしません。エネルギーという究極の生活必需品に関する政策は、理想像だけで議論してはいけないのです。もちろん理想を持つことは必要ですが、それだけでもいけない。これを肝に銘じなければなりません。

福島事故により従前のエネルギー基本計画は当然世論に受け入れられなくなりました。ご承知の通り、現在原子力施設(発電所だけでなく核燃料サイクル関連施設や大学等の研究炉なども含まれます)の安全規制が抜本的に見直され、ほとんどの原子力発電所は稼働を停止しています。原子力発電を止めることによるメリットと同時に、デメリットも発生しています。

さらにこの4月からは電力小売りの全面自由化が行われます。再生可能エネルギーはどのように普及促進していけば良いのか、原子力技術を安全に利用していくことは可能なのか、その社会的合意はどのように得ていけば良いのか。水素社会は本当に到来するのか。様々な課題が山積しています。

ライフラインである電力の話題を身近に感じていただけるよう、タイムリーに記事をお届けしていきたいと思います。これからよろしくお付き合いの程を。

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