もらいすぎ?少なすぎ?地方議員報酬
Japan In-depth / 2016年4月1日 19時0分
相川俊英(ジャーナリスト)
「相川俊英の地方取材行脚録」
議員報酬の適正額を弾き出すのは大変難しい。誰もが納得するような算出方式は確立されておらず、ザクッといってしまえば住民がその報酬額で納得できるかどうかにつきるからだ。その際、ポイントとなるのは議員の仕事ぶりと報酬のバランスである。実際はお粗末な仕事ぶりの議員がほとんどなので、住民の「あんなに報酬を貰っていてけしからん!」という怒りや不満に繋がっているのである。報酬額に見合った仕事をしていない議員ばかりといってもよいだろう。
何かと批判の対象となる議員報酬を全国で唯一、日当制にしているのが、「合併しない宣言」で知られる福島県矢祭町だ。その矢祭町がいま、揺れている。
矢祭町の議会(定数10)は、2008年度からそれまで月額20万円だった議員報酬を日額3万円に変えた。議会内に「議員は本来、ボランティアであるべきだ」との意見が広がり、議員提案による日当制導入の条例改正案を7対2で可決成立させたのである。議員になることに報酬面での魅力がなくなれば、議員の成り手や住民の意識が変わり、選挙も変わるのではないかとの思いもあった。
以来、矢祭町の議員は本会議や委員会などに出席する度に3万円の日当を受け取ることになった。自宅での調査や研究、準備、住民との話し合いや個別の研修などは日当支給の対象外となり、期末手当も廃止。政務活動費や費用弁償もなし。議員1人当たりの平均年額報酬は120万円ほどになり、月額制時代の約3分の1に削減された。しかし、新制度導入は大きな問題を内包していた。議会の役割をいかにして果たすかといった大事な視点が抜け落ちており、議会の機能を高めるための手立てが講じられないままでのスタートとなったことだ。
2008年3月の町議選で日当制議員が初めて誕生した。定数10に対し立候補者は11人だった。導入に関わった現職議員のうち6人が当選したが、日当制に異論が噴出するようになった。「調査・研究に支障をきたしている」「日当制では生活できず、これでは若い人たちが議員になれない」「議員活動に専念できない」「議員の仕事は議場内だけではない」といったものだ。ボランティア精神だけで議員の役割が十分に果たせるものでもなく、果たせたとしても持続させることはさらに難しい。崇高な理想と生身の人間との間に溝が広がっていった。
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