トランプは本当に「日本叩き」? 米大統領選クロニクル その9
Japan In-depth / 2016年4月6日 20時1分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカの大統領選では共和党候補のドナルド・トランプ氏がしきりに日本の名をあげる。そして批判的な言葉をぶつける。つい「日本叩き」という表現を連想させられるほどだ。だがトランプ氏の日本論には確かに非難めいた乱暴な言葉も多いが、なお全体としてはそれほど心配することもない、というのが私の感想である。なぜなら過去の大統領選挙ではもっと過激で険悪な日本非難がいろいろあったからだ。
「日本市場にアメリカ車を売り込むには閉鎖された市場をこじ開けるために米軍部隊を連れていかねばならない」
「アメリカの産業はこのままだと日本に負けて、白旗を掲げ、アメリカの次世代は日本製コンピュータの周囲の床掃除のような仕事しか得られなくなる」
「日本の首相は一人が市場開放を拒む口実がタネ切れになると、次の首相が出てきて、そんな市場開放の話だと聞いたことがないと、シラを切る。そしてアメリカの要請には『検討します』と答えるが、なにもしない」
こんなとげとげしい言葉が大統領候補の口から連日のように発せられた選挙戦がある。
とにかく「日本!」「日本!」と国名をあげての非難が連日のようだった。その言葉の響きはいかにも冷酷で、意地悪く、日本がアメリカの同盟国である事実をも忘れさせるほどだった。1984年の大統領選挙のことである。
この年の大統領選挙は現職の共和党ロナルド・レーガン大統領の再選を阻もうと、民主党側では前副大統領のウォルター・モンデール氏を立てた。後にモンデール氏は日本駐在の大使をも務めた。当時は日米の貿易摩擦がアメリカ全土に火の手のように燃え上がっていた。自動車、鉄鋼、電氣製品など日本の製品がアメリカ市場を席捲する。その一方、アメリカ製品は日本市場にはほとんど入れない、売れない、という状況がアメリカ側に巨大な対日貿易赤字を生んでいた。日本製品に圧倒される米側の自動車や鉄鋼などの産業界が打撃を受けて、企業の閉鎖や労働者の解雇という深刻な事態を引き起こしていた。
モンデール候補はこの状況をとらえて、「日本叩き」と呼べるような激しい日本非難を述べ続けた。民主党リベラル派のモンデール氏がとくにアメリカの労働組合の支援を得ていたことがさらにその対日非難の言辞をエスカレートさせた。同時に共和党レーガン政権の貿易政策をも批判していた。そしてモンデール氏のこの日本糾弾はアメリカ国内の広範な階層から拍手を浴びたのだった。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
ルビオ次期国務長官を注視しよう(下)安倍首相の靖国参拝への支持
Japan In-depth / 2024年11月24日 19時0分
-
明大・海野素央教授、トランプ氏圧勝ひき寄せた「キラーワード」はレーガン元大統領の言葉と分析
日刊スポーツ / 2024年11月12日 11時15分
-
トランプ前大統領の圧勝とその教示
Japan In-depth / 2024年11月7日 23時21分
-
民主党びいきの二大新聞はなぜハリス不支持となったのか
Japan In-depth / 2024年11月5日 12時4分
-
米大統領選で注目「ふたつのジェンダーギャップ」 ハリスとトランプのどちらに有利に働くのか
東洋経済オンライン / 2024年11月2日 17時0分
ランキング
-
1「ネタニヤフ氏に死刑を」 イラン最高指導者
共同通信 / 2024年11月25日 17時46分
-
2韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表に今度は無罪判決 自身が被告の裁判での偽証教唆罪に問われるも 裁判所「検察の証拠だけでは故意があったとみるのは不十分」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月25日 16時19分
-
3中国ハッキング疑惑、米国史上最悪と上院情報委員長
ロイター / 2024年11月25日 12時1分
-
4【独自】イラン、圧力政策の回避を要求 トランプ氏に書簡、協議の意向も
共同通信 / 2024年11月25日 19時30分
-
5中国、日本側にも人的交流の努力求める 日本人の短期滞在ビザ免除再開受け
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 17時50分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください