トランプ旋風に陰り?混戦続く共和党 米国のリーダーどう決まる? その13
Japan In-depth / 2016年4月8日 9時45分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
前回伝えた中絶に関する女性の権利についての発言を何度も翻したことに加え、女性レポーターの腕を掴んで引っ張った選挙管理委員長が暴行罪で起訴され、スタッフ同士の内紛が週刊誌にすっぱ抜かれるなど、さんざんな1週間の後、4月5日に行われたウィスコンシン州の予備選も、テッド・クルーズに持って行かれた。
トランプが夏に控えた党大会までに、過半数である1237人の選挙人を確保してしまえば(現時点では742)、共和党主流派と呼ばれるリーダーたちがどんなにトランプを毛嫌いしても、共和党大統領候補として擁立するしかないが、もしそれに満たなければ、投票のやり直しで2位のテッド・クルーズや、選挙人はわずかしか確保していないが政策が主流派の意見と一致するジョン・ケイシック候補にもチャンスがあるとしている。
アンチ・トランプ勢はようやくNever Trumpのスローガンを掲げ、一致団結しようとしている。ウィスコンシン州でも普段は民主党やオバマ政権の批判ばかりしているラジオ局の有力パーソナリティーらが一斉にトランプ反対、クルーズ支持を打ち出した。Wisconsin Niceと呼ばれるほど、普段は穏健な州民として知られ、ロナルド・レーガン政権以降はずっと民主党支持のウィスコンシン州だが、それでもトランプをめぐってはデモ隊の小競り合いも報告されていた。
今後、トランプが過半数を確保するかどうか、各州の予備選のルールや選挙人の人数にもよるが、どう転んでもギリギリいくかいかないかの線にあるので、先週のようなトラブルが続くと危うくなる。だが、この後の予備選は東のニューヨーク州(選挙人95)、西のカリフォルニア州(選挙人172)など、獲得できる選挙人数が多く、本選では民主党よりで共和党の候補は勝ち目はないが、かといってクルーズのような宗教保守派とは対極にリベラルな有権者が多い州が続く。この2州ではどう転んでもトランプが勝つ。19日に予定されているニューヨーク州の予備選ではトランプが盛り返すことになるだろう。
一方の民主党では、3月22日にアイダホ州党集会からバーニー・サンダースが6州勝ち続けていることを理由に、このまま勢いをつけたサンダース候補がヒラリー・クリントンに追いつくという楽観的な見方もあるが、これはプライマリーと呼ばれる予備選挙よりも、コーカスと呼ばれる党員集会の方が、熱心で弁が立つ有権者が参加者を説得し、盛り上がりで優位に持ち込めることができたからであって、これからの予備選ではほとんど党大会が行われないことを考慮すると、やはりクリントンが今後も有利であることは否めない。
ニューヨーク州は、クリントンが上院議員を務めた「お膝元」であり、今のところ事前調査ではクリントンが勝つとされているが、それだけでは不十分で「圧勝」に持ち込みたいクリントンと、勢いをつけたサンダースがどこまで接戦に持ち込み、選挙人を獲得できるかに注目が集まっている。
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