電力小売り自由化の真実 その1
Japan In-depth / 2016年4月8日 18時0分
竹内純子(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員)
「竹内純子の環境・エネルギー政策原論」
最近様々な場面で「電気」の広告が目につくようになりましたね。いままで電力会社の広告というと、夏に省エネへの協力を呼びかけるものや、たこ揚げをするときには電線に注意してというような電気安全の呼びかけがほとんどで、「電気を売ります!」という普通の広告を見ることはほとんどなかったのではないでしょうか。なぜ急に電気のCM合戦が始まったのでしょう。
実は4月1日から「電力小売りの全面自由化」が行われたからなのです。と言われても何のことやら、と言う感じでしょうが、実は私たちの暮らしになくてはならないライフラインである電気のあり方が大きく変わります。
何がどう変わるのか。自分たちにどう影響するのか。わからないことだらけだと感じている方も多いようで、自由化についてここ数か月、講演や取材でお話しさせていただくことが急増しています。今回はそうした場でいただくことの多いご質問に答えるかたちで、皆さんの不安や疑問にお答えしていきたいと思います。
Q1:そもそも自由化とは何?
国民の生活に与える影響の大きい電力や交通、通信などの公共インフラは、政府の規制の下に置かれてきました。電力でいえば基本的には、欧州は国営企業が、日米は私企業が政府の規制の下で事業を担ってきたのです。事業者に供給責任を負わせる一方、投資したコストの回収が確実になるように料金設定を認める、但し事業者が儲けすぎないように料金改定には政府の認可を得ることを必要とするというかたちで、政府が事業に強く関与してきたのです。
供給責任を負う事業者は、停電を起こすことを避けたいので、余裕をもって設備投資を行い、徐々に設備余剰が生じます。要はメタボリックな状態になっていくのです。設備余剰を抱えればそれを支える電気料金は高くなってしまいますので、そうした事業者を競争環境に置くことによってスリムにさせ、電気料金を安くさせようというのが自由化です。
「自由化」とは、政府の規制を廃止し、市場原理に委ねることを意味します。通信や金融などこれまで多くの産業部門・業界で「自由化」は行われてきましたし、わが国の電気事業においても、発電事業は1995年から、小売り事業についても規模の大きい顧客を対象とした部門については2000年から既に自由化されています。小売り部門で自由化されていないのは、家庭やコンビニエンスストアのような小規模店舗だけだったのですが、4月からこうした小規模なユーザーを対象とした小売り事業についても自由化されることとなったのです。
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