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電力小売り自由化の真実 その1

Japan In-depth / 2016年4月8日 18時0分

電気事業を大別すれば、「作る(発電)」、「送る(送配電)」、「売る(小売り)」の3部門がありますが(下図)、発電部門と小売り部門はそれぞれ自由化して多くの事業者が参入することによるメリットが期待できます。発電においては再生可能エネルギーなど多様な発電技術が生まれたことや電力会社以外の企業の自家発電をうまく社会で活用すること等のメリットがありますし、小売りにおいてはメニューやサービスの多様化といったメリットが生まれるでしょう。

しかし「送る(送配電)」については、事業者が自由に参入して競争すれば、街中に送電線や電柱が乱立するということになりますので、送配電網については公益的事業として運用されるようになります。送配電を担う事業者が特定の発電事業者や小売り事業者を優遇するようでは、せっかくそれぞれの分野を自由化しても、公正な競争が行われませんので、送配電部門を切り離して、発電・小売りの競争が活発かつ公正に行われるようにするのが「発送電分離」です。

 

自由化によって誰が自由になるのでしょうか。消費者が事業者を選択する自由を手にするという側面もある一方、これまで政府の規制によって縛られていた事業者が自由になる、事業者が顧客を選択する自由や料金設定の自由を手にすることでもあるのです。

 

Q2:電気料金は安くなるの?

答えとしては、安くなる可能性はありますが、高くなる可能性もあります。これまで規制料金として政府が介入していたのを市場に委ねるわけですから、上下両方とも可能性があるわけです。

自由化すれば各事業者が競争するようになり、その競争圧力によって電気料金の引き下げや、多様なビジネスモデルの発展も期待できます。ただ、競争市場になれば、設備投資が回収できるかどうかわからなくなりますので、発電事業は経営が安定的でなくなり、銀行からの資金調達に関わるコストは増大します。

Q1で書いた通り、送配電事業は公益事業体が担い、料金の回収は確実に担保されることになりますので、こうした問題は起こらないでしょう)。電力は「設備産業」あるいは「装置産業」と言われるように、莫大な(例えば75万kW級の石炭火力発電所1基作るにも約1700億円)設備投資を必要とします。そのため、これまで投資回収を確実にしていた総括原価方式による料金規制がなくなることが、電気の原価に与える影響は甚大です。

発電事業者は、経営が不安定化することを避けるため、また、燃料等の調達においてバーゲニングパワー(調達にあたっての交渉力)を働かせるために、合併や統合等によって大規模化していきます。大規模化して市場の寡占化が進めば、競争圧力は働きづらくなります。自由化した欧米諸国ではエネルギー事業者の大規模化が進み、長期的に自由化による電気料金引き下げの効果が認められているという事例は実は殆ど存在しません。(下図)

 

電気料金が下がるかどうかは、電力事業者が自由化を機に経営に工夫をする、例えば燃料調達の工夫などでどうコストダウンを図るかがカギとなります。政府は良い競争、良い経営努力を引き出す環境整備をすること、事業者はそれに応えて努力を継続することが必要で、自由化して市場任せにしてしまっては期待できる効果は限られてしまうこととなります。

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